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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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613/680

風を裂く太腿。瀬戸内港湾シーサイド・チェイス

舞台は瀬戸内の港湾都市――広島県尾道市。


坂と路地と猫と映画の街。海は穏やか、観光客はのんびり、ラーメンはうまい。しまなみ海道の玄関口としても知られるこの町は、本来“ゆったり”が売りである。


だがその日、無線が荒れた。


「違法物資搬送グループ、港湾倉庫から逃走!電動スクーター二台!」


ヒロイン隊、現場へ急行。


違法搬送グループは細い路地へ逃げ込む。尾道名物の“猫も通れる坂道”。パトカーは入れない。原付でもきつい。


「くそ、狭すぎる!」


美月(大阪)が叫ぶ。


その横で、大西結月(香川)が静かに言った。


「自転車、貸してください」


隼人補佐官(東京)が即座に頷く。


「いけるな?」


「いけます」


支給された戦術用軽量ロードバイクを、結月は一瞬でサドル調整。


ギア確認。


勾配を目測。


「この角度なら、三段上で踏み切れる」


誰も分からない。


スタート。


電動スクーターが唸る。


だが――


二歩目の踏み込みで、空気が変わる。


太ももが、唸る。


ダンシング(立ち漕ぎ)で一気に加速。


狭い石畳の路地を、体重移動で滑らかに抜ける。


コーナー。


インを刺す。


スクーターの後輪と並走。


犯人が振り向く。


「は!?なんで!?」


結月、涼しい声。


「風、読めてないで」


さらに加速。


坂道へ。


電動スクーターのモーター音が苦しそうに唸る。


結月の呼吸は乱れない。


競輪仕込みの心肺機能。


踏む。


踏む。


踏む。


一気に並び、横からワイヤーデバイスを放つ。


スクーターのハンドルに絡む。


減速。


転倒。


結月は鮮やかにバイクを止め、犯人を確保。


犯人、呆然。


「……なんで追いつくんだよ」


「うどん食ってますから」


言ってない。


だが言いそうな空気。


無線の向こうで他のヒロインたちが到着。


みーちゃん(愛媛)が息を切らして言う。


「速……」


さつき(徳島)が丁寧に。


「大西さん、本当に素晴らしい走りでございました」


るみねぇ(福島)がぽかん。


「おら、映像追いつがねぇがったぞ」


隼人補佐官が冷静に評価。


「電動より速い人力。理屈は分からんが結果は出た」


結月はバイクを担いで戻る。


呼吸はほぼ平常。


汗も少ない。


「これくらい、楽勝ですよ」


他のヒロインたちが同時に思う。


(楽勝……?)


尾道の坂の上から見える瀬戸内海は今日も穏やかだ。


だが犯人の心は荒れ模様。


「自転車で追ってくるとか反則だろ……」


結月は静かにヘルメットを外す。


競輪では、不完全燃焼。


だが今日は違う。


踏み切った。


ゴールした。


しかも拍手付き。


観光客がざわつく。


「あれヒロイン?」


「自転車、速すぎん?」


ノムさん(広島)がどこからともなく現れる。


「ヒロヒロでやればよかったのぅ!」


のどか(広島)が即座に止める。


「真面目な任務や」


結月、少しだけ笑う。


「次は、もう少し手加減します?」


全員。


「せんでええ」


港の風が吹き抜ける。


電動スクーターより速い太もも。


尾道の坂道は、今日から少しだけ伝説になる。


うどんより速い女がいる、と。

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