ペダルより難しいマイク。高石トークで讃岐娘が空回り!?
大阪府高石市。
海風が抜ける工業都市、コンビナートの煙突が遠くに見えるその市民ホールで、戦隊ヒロインのトークイベントが開催された。
タイトルは、
「瀬戸内から来ました!ヒロイン大放談 in 高石」
どこが放談かは知らないが、とにかく満席である。
登壇メンバーは豪華だ。
大西結月(香川)。
迫田澄香(宮崎)。
赤嶺美月(大阪)。
坂井まどか(大阪)。
春日美咲(奈良)。
白浜麻衣(和歌山)。
そしてMCは――
元バスガイド、西里澄香(熊本)。
マイクを持つと、空気が変わる。
「はいはーい、今日は遠いところよー来てくれましたねぇ!」
熊本弁の柔らかい響きが会場を包む。
「ほんなこつありがたかです!」
観客、笑顔。
まずは自己紹介。
美月(大阪)が河内弁で爆発。
「今日はな、全力でしゃべるで!」
まどか(大阪)が安定のバランス。
「まあまあ、落ち着いてな」
美咲(奈良)は上品に。
麻衣(和歌山)は優雅に舞姫スマイル。
そして、結月。
マイクを握る。
「……大西結月です」
沈黙。
客席、静か。
「元、女子競輪選手です」
以上。
澄香(熊本)が即フォロー。
「ほらほら、その太ももが国家機密級の結月さんですよー!」
会場どっと沸く。
結月、少しだけ救われる。
トークテーマは「挫折と再出発」。
澄香が柔らかく振る。
「結月さん、競輪を引退された時はどんなお気持ちでしたか?」
結月、真顔。
「悔しかったです」
三秒で終わる。
澄香がにこやかに続ける。
「そら悔しかったたいねぇ。でもね、その悔しさばどうやって乗り越えたと?」
結月、少し考える。
「……筋トレです」
客席、笑い。
澄香が大きく頷く。
「ほらー!この人はね、落ち込んでもスクワットばしよるとですよ!」
会場爆笑。
結月、驚く。
(今の、笑うとこなんや……)
美月が茶々を入れる。
「うち落ち込んだら食べるわ」
まどかが即座に突っ込む。
「だから太るねん」
空気が回る。
結月は必死に考える。
“盛り上げる”“間を作る”“笑いを取る”
だが、どうしても競技モードになってしまう。
質問コーナー。
「結月さん、香川といえば?」
「うどんです」
即答。
客席、うす笑い。
澄香が助け舟。
「ほらー!うどんみたいにコシのある太ももやけんね!」
爆笑。
結月、心の中でメモ。
【うどん=太ももに変換】
イベント終了。
拍手は大きい。
だが結月は少しだけ肩を落とす。
楽屋。
「うまく、できませんでした」
澄香が隣に座る。
熊本弁で優しく言う。
「なん言いよると?ちゃんと届いとったばい」
「でも、盛り上げられませんでした」
澄香が笑う。
「盛り上げるとが仕事じゃなかよ。自分の言葉で話せばよか」
「自分の……」
「結月さんはね、速さも本気も持っとる。あとはね、ちょっとだけ間を作ればよかと」
澄香は手でジェスチャー。
「一拍置くとよ。ほんならお客さんが想像するけん」
結月、真剣にうなずく。
「間……」
「あとね、真面目すぎるけん、たまには自分ばいじってよかと」
「自分を……?」
「『うどんよりコシある足です』とか言えばよかたい!」
結月、吹き出す。
「それ、使います」
帰りの新快速。
結月はスマホにメモを取る。
【改善点】
・間を作る
・自分いじり
・うどん活用
・澄香さんの間合い研究
研究熱心な讃岐娘。
悔しさは、まだある。
でも今回は違う。
これは負けではない。
成長途中。
次は、もっと踏み込む。
マイクも、ペダルも。
完全燃焼は、まだ先。
だが確実に、ギアは上がっている。
高石の夜景を見ながら、結月は小さくつぶやく。
「次は、笑わせる」
そしてその横で、澄香の声が響く。
「ほんなこつ楽しみばい」
ペダルより難しいマイク。
だが、讃岐ダッシュ娘は今日も前に進む。




