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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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602/680

凡庸査定、後方支援合格。レジェンド29歳の再配備。

松山のレジェンド地下アイドル、越智美晴――みーちゃん。


ヒロヒロ加入から間もなく、ついにやってきた。

富士川研修。


戦隊ヒロイン候補生たちが汗と涙と謎の筋肉痛を積み上げる、あの場所である。


初日の朝。


みーちゃんはストレッチをしながら小声でつぶやいた。


「……関節が鳴る」


パキッ。


鳴った。


年齢は秘密。

だが身体は正直だ。


隼人補佐官が腕組みをしている。ロジカル熱血の男である。


「基礎体力テスト、いきます」


ランニング。反復横跳び。懸垂。持久走。


結果。


悪くはない。

だが特別良くもない。


隼人補佐官が真顔で言う。


「正直に申し上げます」


みーちゃんが身構える。


「年齢的に老化は始まっています」


直球。


「ですよね」


「身体能力は……凡庸」


「ですよねぇ!」


周囲がざわつく。


「戦闘任務で前線に立つ水準には、残念ながら届きません」


バッサリ。


ノムさんが横から割って入る。


「待て!レジェンドやぞ!」


「戦場はレジェンドでは勝てません」


冷静。


のどかが腕を組む。


「拳は年齢を選ばんが、足は選ぶ」


妙に名言。


みーちゃんは苦笑する。


「分かっとります。三十路前ですけん」


しかし、ここで終わらないのがこの女だ。


次は座学。


戦術理解テスト。


地形図、兵站、包囲網、撤退ルート。


隼人補佐官の目が変わる。


「……理解が早い」


みーちゃん、ペンを走らせる。


「この陣形、桶狭間の逆応用ですね?」


教室が静まる。


「補給線が細い。ここを叩かれたら終わりです」


歴女の血が騒ぐ。


戦術を歴史で例える。


「島津の釣り野伏せみたいなもんです」


「誰が分かる」


だが理論は正確だ。


隼人補佐官が頷く。


「戦術理解度は高い。頭の回転が早い」


みーちゃん、胸を張る。


「暗記は得意です」


「歴女ですからね」


のどかが笑う。


さらに意外な事実が明らかになる。


「井坂農装の期間工をやっていたと聞きましたが」


隼人補佐官が問いかける。


「蒼牙の組み立てラインにいました」


空気が変わる。


「クラッチの締結トルク、規定値言えます」


さらっと言う。


整備班がざわつく。


「マジか」


実技テスト。


エンジンが不調の車両。


みーちゃん、工具を握る。


「この音、ベルトやない?」


数分後。


エンジン復活。


ノムさんが叫ぶ。


「うおおお!」


隼人補佐官、冷静に評価。


「前線は厳しい。だが後方支援、整備補助、簡易修理は可能」


「つまり?」


「後方支援なら行けます」


みーちゃん、ガッツポーズ。


「やった」


老化はしているが、油には強い。


そして本職。


イベント舞台テスト。


音楽が流れる。


みーちゃんのスイッチが入る。


ダンスはキレキレ。

十年以上やった身体は、戦闘よりリズムに反応する。


ターンが軽い。

ステップが正確。

笑顔は職人。


観客役のヒロインたちが拍手。


歌唱テスト。


声は安定している。

だが。


藤原詩織のように感動の渦にはならない。

西里香澄のように場内が拍手喝采にはならない。


隼人補佐官が淡々と記録する。


「歌唱力、平均以上。突出ではない」


みーちゃん、苦笑。


「ソロシングル出したことありますけどね」


「ほう」


「……廃盤です」


沈黙。


ノムさんが小声で聞く。


「何枚売れた?」


「聞かんといて」


倉庫の奥で眠っている幻のCD。


「プレミア付いてないの?」


「付くかい」


全員爆笑。


総合評価。


身体能力:凡庸。

戦闘適性:低。

戦術理解:高。

機械適性:高。

舞台適性:プロ。

年齢:非公開。


隼人補佐官がまとめる。


「戦闘の前線ではなく、後方支援・戦術補佐・整備・イベントの要として起用」


ノムさんが拍手。


「ヒロヒロの戦略担当じゃ!」


のどかが頷く。


「拳の代わりに頭を使え」


みーちゃん、静かに笑う。


「歴史は後方が勝つんです」


富士川の夕日が沈む。


レジェンド地下アイドルは、前線には立てない。


だが、戦場は前だけじゃない。


油まみれの手で、しゃもじを持つ日も近い。


そして彼女は今日も、関節を鳴らしながら言う。


「凡庸でも、続けたらレジェンドになりますけん」


それはたぶん、真理である。

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