盗塁王ヨシヒコ降臨!紫のヒロヒロ原点回帰ナイト
広島支部長・江波のどかとノムさん。
巴投げだの酒都炎上だの、県内を騒がせまくったヒロ室広島――ヒロヒロ。
だが今回は違う。
「今日は真面目じゃけぇ」
のどかが言い、
「本当に真面目だ」
とノムさんも頷く。
会場は、かつて赤い歓声に包まれた旧市民球場跡地。今はイベント広場として整備されているが、ここに立つだけで胸が熱くなる広島人は多い。
今回の主役は――
元赤い球団の名ショート、ヨシヒコさん。
登場した瞬間、空気が締まる。
長身、シャープな輪郭、鋭い眼差し。
現役時代と変わらぬイケメンぶり。
昼も夜も盗塁王と呼ばれ、ベースだけでなくハートまで奪った男。
だがその華やかさの裏には、誰よりも早く球場入りし、誰よりも遅くまでバットを振る練習の虫という顔があった。
司会は熊本弁の元バスガイド、西里澄香。
「今日はばってん、ほんとにスペシャルゲストばい!」
ヨシヒコさんがマイクを握る。
「夢ってね、与えるものじゃなくて、見せるものなんです」
会場が静まる。
「僕は特別な才能があったわけじゃない。ただ、毎日走った。毎日振った。それだけです」
のどかが真剣に聞き入る。
「うちらも、挑戦する姿を見せたいです」
ヨシヒコさん、うなずく。
「君は目がいい。マウンド立てるよ」
のどか、照れる。
梨乃が横からささやく。
「盗塁って、盗むだ?」
「違う!」
会場、爆笑。
ヨシヒコさんも笑う。
「盗むって言うけど、ルールの中で奪うんだよ」
「じゃあ正義だな」
「そう、正義の盗塁だ」
トークはヒロインの今後にも及ぶ。
「ヒロインも同じです。派手なショーの裏に、基礎がある。そこを大事にすれば、必ず続く」
ノムさんが小声で言う。
「基礎か……」
のどかが腕を組む。
「ヒロヒロ、基礎足りとらんかもしれん」
梨乃、手を挙げる。
「基礎って何だ?」
「そこからか!」
爆笑。
だが空気は温かい。
ヨシヒコさんは最後に言った。
「走る勇気。それが夢をつくる」
拍手が広がる。
イベント終了後、のどかが頭を下げる。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ。君たち、面白いし真面目だ」
ノムさんがつぶやく。
「盗塁講座やりましょうか」
「それはちゃんと準備して」
澄香が締める。
「今日はほんとに、よか夜でしたばい!」
帰り道。
梨乃がぽつり。
「ヨシヒコさん、ベースも心も盗むだな」
のどかが笑う。
「それが盗塁王じゃ」
巴投げも泥酔もない夜。
だがヒロヒロは確実に一歩前へ進んだ。
盗塁王ヨシヒコと、紫のヒロヒロ。
夢は、走る者のそばにある。




