赤い情熱、紫の逆襲!戦隊ヒロインスペシャルナイター
遥室長に新橋でたっぷりとお説教を受けたノムさんは、珍しく神妙な顔で広島に戻ってきた。
「次はな……真面目にやる」
のどかは腕を組んでうなずく。
「本気のやつ、やるんじゃね」
その結果、生まれたのが――
“戦隊ヒロインスペシャルナイター”。
舞台は広島駅近くのある、あの赤い本拠地球場。広島人の魂が集まる聖地だ。
今回は地元球団とのタイアップ企画。
ヒロヒロ、ついにメジャー級。
試合前、グラウンドに現れたのはのどか、梨乃、沙羅、澪、理世の五人。ヒロインショーが始まると、スタンドは予想以上の熱気に包まれた。
のどかが声を張る。
「今日は最後まで全力応援じゃけぇ!」
沙羅はキラキラ笑顔。ハマのプリンセスの異名を持つ彼女だが、今日はホーム側。
「わ、私も今日は広島モードで……!」
澪は冷静にマイクをさばき、理世は品よくポーズを決める。
そして梨乃。
「ボールってどっちが投げるだ?」
のどかが即座に頭を小突く。
「それ今さら聞くことじゃない!」
観客、爆笑。
そして始球式。
マウンドに立つのは、元カープ女子ののどか。今はサッカーに心を奪われているが、この日ばかりは赤い血が騒ぐ。
深呼吸。
セット。
投げた。
ビシッ。
ノーバン。
スタンドがどよめく。
「のどかーーー!」
「ナイスボール!」
本人は少し照れながらガッツポーズ。
「まだいけるじゃろ」
ノムさん、満足げ。
試合開始後もヒロヒロは止まらない。
のどかによる応援指導タイム。
「ほら!立って!スクワット!」
スクワット応援が始まり、スタンドが揺れる。
梨乃は一人リズムがズレる。
「いち、に、さん、五!」
「四を飛ばすな!」
横浜のチームとの対戦ということで、沙羅は一瞬複雑な顔をするが、野球の細かいルールは知らない。
「ホームってどっちだっけ?」
「こっちじゃ!」
結果、全力でホームチームを応援。
五回裏終了後、ヒロインショー。
ヒロヒロらしい小ネタ満載。
「野球って何回まであるだ?」
「九回!」
「長い!」
観客、また爆笑。
澪はホームランガールとして待機。
スタンバイ姿が美しい。
だがこの日はホームランが出ない。
七回裏、ラッキーセブン。
ヒロイン五人がグラウンドに再登場し、球団歌を合唱。観客も一体となる。
梨乃、歌詞が分からず適当に口パク。
「それ絶対違う歌!」
理世が小声でフォローする。
そして試合終盤。
のどかの熱い応援がスタンドを一つにする。
「最後まで声出すんじゃ!」
スクワット応援再び。
ついにホームチームが逆転。
スタンドは総立ち。
のどか、拳を握る。
「やっぱりここは特別じゃ」
元カープ女子の顔に、満足げな笑み。
試合終了。
ホームチームの勝利。
ノムさんは腕を組み、しみじみ。
「今日はな……真面目だっただろ?」
のどか、即答。
「ギリギリじゃ」
梨乃はポップコーンを抱えたまま聞く。
「今日、何が勝っただ?」
「全部だ!」
こうしてヒロヒロは、真面目と悪ノリの絶妙なラインで、球場を完全制圧。
澪は最後までホームランガール出番なしだったが、
「今日は勝ったからいいです」
と爽やかに笑う。
動画視聴数は過去最高クラス。
コメント欄は「これぞヒロヒロ」「今日は健全」「のどかノーバン神」と大盛況。
遥室長も配信を見ながら頷く。
「今日は……まあ、合格だら」
ヒロヒロは少しだけ大人になった。
たぶん。
だが梨乃が帰り際に言った。
「次は私がホームラン打つだ!」
「お前はまずルール覚えろ!」
夜風の吹く赤い球場に、笑い声が響いていた。




