紫の暴走、一時停止?ヒロヒロ大反省会(たぶん反省しない)
広島支部長・江波のどかとノムさん。
同じ高校出身の先輩後輩コンビによる悪ノリ集団、ヒロ室広島――通称ヒロヒロは、もはや止まらない暴走機関車である。
尾道で猫とラーメンを混ぜ、三次で怪談を泥酔で台無しにし、呉で艦隊ショーを茶番に変え、東広島でついに宙を舞ったノムさん。広島市内を飛び出し、県内各地へ勢力拡大。どこへ行っても人だかり、どこへ行ってもコメント欄は「ヒロヒロ最高」。
絶好調である。
だが。
冷静に考えれば、やっていることはだいぶバカバカしい。
戦隊ヒロインプロジェクトは本来、品行方正、青少年に夢を与え、地域創生を掲げる真面目な団体である。紫の暴走は、地域創生というより地域騒然だった。
ついにヒロ室本部が動いた。
場所は東京・新橋。ヒロ室本部会議室。
ノムさん、呼び出し。
向かいに座るのは、静岡県富士市出身の真面目な広報官・遥室長。柔らかい笑顔だが、目が笑っていない。
「ノムさんだから信頼して、自由にやらせてきただけんどねぇ」
穏やかな駿河弁。だが空気は氷点下。
「ちょっと……次元が低すぎるら。動画の視聴者が多けりゃええってもんじゃないだよ。これからは企画したら、一回こっちでチェックするら」
ノムさん、正座気味。
「遥ちゃんは頭が固すぎるわ、鬼ばばや」
遥室長、にこり。
「……何か言った?」
ノムさん、即座に背筋を伸ばす。
「いや……何も……」
会議室の隅で隼人補佐官が静かに目を伏せる。
彼は分かっている。この空気は逆らってはいけないやつだ。
「とにかく、ヒロヒロはヒロ室の一部だでね。看板背負っとること、忘れちゃだめだら」
遥室長は穏やかに締める。
「飲酒は禁止。配信は事前チェック。これ、決まりだら」
ある意味、当たり前である。
ノムさん、肩を落として退室。
廊下で隼人補佐官と並ぶ。
「隼人、お前も大変だな」
「ええ、まぁ……」
短い沈黙。
やがて二人は、夜の新橋のガード下へと消えていった。
数時間後。
ノムさん、愚痴る。
「ヒロヒロはな、自由だから面白いんだ」
隼人補佐官、ビール片手にうなずく。
「でも、巴投げはさすがにやり過ぎですよ」
「美しかっただろ?」
「美しかったですが」
二人は乾杯する。
一方、広島。
のどかは本部からの通達を読み、腕を組む。
「飲酒禁止、事前チェック……」
梨乃が横からのぞく。
「これでヒロヒロ、真面目になるだ?」
のどか、ニヤリ。
「ならんじゃろ」
ヒロヒロは止まらない。
ただ少しだけ、ブレーキが付いただけだ。
配信のオープニングから酒瓶は消え、ノムさんの絶口調も控えめになる……はずだった。
だが初回の事前チェック企画会議で、ノムさんは言った。
「では次は“ヒロヒロ静かに盛り上がろう選手権”だ」
のどか、即ツッコミ。
「それ絶対静かにならんやつじゃろ」
梨乃、拍手。
「いいだ!」
ヒロ室本部の監視は強化された。
飲酒は禁止。
台本は事前提出。
コンプライアンスも少し強化。
少しはマトモになるのか?
答えはたぶん、ならない。
ヒロヒロは反省しているフリがうまいだけだ。
そしてどこかでまた、誰かが宙を舞う。
紫の悪ノリは、今日も静かに、そして確実に次の騒動を仕込んでいる。




