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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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589/693

酒都炎上!ヒロヒロ東広島・巴投げ大惨事

広島県内を荒らしまわ…いや、盛り上げまくっている悪ノリコンビ、江波のどかとノムさん率いるヒロ室広島、通称ヒロヒロ。尾道で猫に囲まれ、三次で怪談を崩壊させ、呉で艦隊ショーを茶番に変えた二人が、ついに足を踏み入れたのは東広島市である。


東広島市――とりわけ西条は“酒都”。白壁の酒蔵が立ち並び、ほのかに甘い麹の香りが漂う、文化と発酵の街だ。広島大学の学生も多く、若さと伝統が同居する、どこか知的で落ち着いた空気をまとう町。


そこへヒロヒロ。


不安しかない。


今回のスポンサーは地元の老舗酒蔵数社。

テーマは「ヒロインと巡る酒都の夕べ」。

のどかは珍しく真面目な顔で言った。


「今日は落ち着いてやるけぇ。広島の誇りじゃけぇね」


ノムさんも神妙にうなずく。

「任せなさい。私は文化人だ」


その五分後、生配信の“生CM”が始まった。


酒蔵の樽を背に、ノムさんがグラスを掲げる。


「この酒はですね……実に透明感がある」


一口。


「うまい」


二口。


「これは夜を包み込む」


三口。


「まるで……瀬戸内の月が……」


止まらない。


スポンサーの好意で“味見程度”のはずが、いつの間にか普通に飲んでいる。いや、がぶ飲みだ。


そして始まる“絶口調”。


妙に艶っぽい、昭和深夜番組風ナレーション。

「この喉越しはですね……心の襟元をそっと開く……」


のどかのこめかみに青筋が浮かぶ。


「ちょっと、飲み過ぎとらん?」


ノムさん、聞いていない。


「この芳醇さ……これはもう、罪だ」


配信コメント欄がざわつく。


「始まった」

「今日もヒロヒロ」

「止めてあげて」


ノムさんは足元がおぼつかなくなり、マイクを握ったまま観客席へふらり。


「酒は……人生だ……」


その瞬間、のどかの堪忍袋が切れた。


「ええ加減にしんさい言うとるじゃろ!」


広島弁が炸裂する。


次の瞬間、のどかの動きは早かった。

柔道有段者、戦隊ヒロイン随一の武闘派。


がっちりと袖を取り、体を落とし、鮮やかな巴投げ。


ノムさん、宙を舞う。


白壁の酒蔵を背景に、スローモーションで回転する中年男性。


観客、静止。


配信コメント欄、爆発。


「飛んだ」

「のどか最強」

「巴投げきたーーー」


バサッ。


安全マットの上に叩きつけられるノムさん。


一瞬の沈黙。


梨乃が駆け寄る。


「社長ー!大丈夫だらぁ!?」


のどか、息を整えながら一言。


「文化人はまず水飲みんさい」


ノムさん、ゆっくり起き上がり、ふらふらしながら親指を立てる。


「いい技だ」


会場、爆笑。


同時視聴者数はヒロヒロ史上最高を記録。

「ヒロヒロクオリティ」

「ヒロヒロ最高」

「酒都で投げるな」

コメントが止まらない。


スポンサーの蔵元も苦笑しつつ拍手。


「宣伝効果は抜群ですね……」


結果的にイベントは大成功。

日本酒は完売。

ヒロヒログッズも飛ぶように売れた。


だが後日。


この回を視聴した遥室長は、静岡の自宅で頭を抱えていた。


「……ノムさん、はじけすぎだら」


画面には、宙を舞うノムさんの姿がリピート再生されている。


隣で隼人補佐官がぽつり。


「巴投げは美しかったですよ」


遥室長、ため息。


「問題はそこじゃないのら」


こうして“東広島巴投げ事件”はヒロヒロ史に刻まれた。


酒都で宙を舞った男と、

それを本気で投げた支部長。


文化と悪ノリの境界線を越えながらも、なぜか愛されるヒロヒロ。


次はどこで誰が飛ぶのか。


広島の夜は、今日も発酵している。

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