霧とワインと大暴走!三次きりきり怪談ナイトは伝説になった
ヒロヒロ、ついに山あいへ。
尾道で猫と坂を制した広島支部長・江波のどかとノムさんは、さらに調子に乗った。
「次は三次じゃ」
三次市。
盆地に霧が立ちこめ、歴史と怪談文化の香りが漂う町。
お好み焼きソースが大好きで温厚で知性あふれる語り口と品格ある進行で県内知名度100%とも言われる名司会者の出身地。
落ち着きとユーモアが同居する、味のある街。
そこへヒロヒロがやって来た。
イベント名は――
「三次きりきり怪談ナイト!ヒロイン肝試しダービー」
霧の出やすい公園エリアに特設ステージ。
背後には川。
照明はやや怪しげ。
やる気は満々。
そして今回のスポンサーは地元ワイナリー。
「この土地のブドウはええんじゃ」
のどかが説明する横で、ノムさんは既にグラスを傾けている。
「うまい。実にうまい」
一杯。
二杯。
三杯。
「これはな、夜と相性がいいんだ」
怪談前に酔っている。
配信スタート。
視聴者数、いきなり急上昇。
第一部、怪談朗読対決。
綾乃がしっとり語る。
「夜道に佇む影は――」
観客、静まり返る。
ひかりは低い声で本格派。
梨乃は原稿を持ちながら震える。
「えっと……幽霊さんが……」
噛む。
笑いが漏れる。
そこへ、酔いが回ったノムさん。
「霧の夜にはだな……」
急に“絶口調”。
妙に艶のある深夜番組ナレーション風で、怪談が下ネタ方向へ転がり始める。
のどか、即ツッコミ。
「何言うとんじゃ!」
ノムさん、止まらない。
「夜は大人の――」
「やめぇ!」
配信コメント欄爆発。
「これでヒロヒロクオリティ」
「ノムさん暴走」
「のどかのツッコミ最高」
第二部、霧の肝試しダービー。
ヒロインが順番に暗がりを歩く。
梨乃、怖がる前に段差で転ぶ。
「痛い!」
幽霊役のスタッフが出る前にコケる。
観客爆笑。
ノムさん、ワイン片手に実況。
「おお、転倒も味だ」
のどか、真顔。
「味じゃない!」
ひかりは冷静に歩き、綾乃は優雅にかわす。
美月は本気でビビる。
そして霧が濃くなる。
雰囲気は抜群。
なのに、ノムさんが再び絶口調。
「この霧はな……恋の霧だ」
「違う!」
のどかが本気で肩を揺らす。
視聴者数さらに伸びる。
コメント欄は祭り。
「止めないで」
「のどか頑張れ」
「神回」
イベント終盤、ワイナリーの社長が苦笑。
「宣伝にはなった」
ノムさん、完全に出来上がっている。
怪談の締めでなぜか乾杯。
「三次に、乾杯!」
のどかが額に手を当てる。
「もう……」
梨乃は笑っている。
「楽しい!」
結局、怪談も肝試しもグダグダのまま終了。
だが視聴数は過去最高。
翌日、SNSで“伝説の回”と呼ばれる。
数日後、ヒロ室本部。
遥室長がモニターを見終わる。
無言。
そして一言。
「ノムさん、はじけすぎだら」
やや怒っている。
真帆が肩を震わせる。
「でも、数字はすごい」
三次の霧は晴れたが、ヒロヒロの勢いは止まらない。
ノムさんは二日酔いで言う。
「次は控えめにいこう」
のどかが即答。
「信用ならん」
梨乃はにこにこ。
「ワイン美味しかった!」
霧とワインと暴走。
ヒロヒロは今日も、くだらなく、そして伝説を更新している。




