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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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584/693

静かなる紫の誓い――ヒロヒロ、しゃもじを鳴らさない日

広島市中心部。川と緑に囲まれた静かな一角。

ヒロヒロがいつも騒ぐあの空気とは、少し違う。


この日の企画名は――


「平和公園しゃもじ静粛選手権」


いつもならラッパを鳴らすノムさんが、今日は帽子を取り、深く頭を下げた。


隣に立つ広島支部長・江波のどかも、真剣な表情。


「今日は、まず祈りからじゃ」


のどかは被爆4世。

平和公園は、彼女にとってただの観光地ではない。


ヒロヒロファンと一緒に折り続けた千羽鶴。

色とりどりの紙が束ねられ、静かに奉納される。


梨乃も神妙な顔で持つ。


「きれいだね」


のどかが小さくうなずく。


「広島は、忘れん街じゃけぇ」


観客も自然と静かになる。


そのあと、ノムさんがマイクを握る。


「……さて」


間が長い。


「しゃもじは、今日は叩きません」


ざわ…ざわ…


ヒロヒロにしては異様な静けさ。


今回のルールは単純。


しゃもじを使って“音を出さずに”応援ポーズを競う。


叩いたら失格。

笑っても失格。

とにかく静かに、全力で応援。


美月が小声で。


「ヒロヒロやのに無音て」


綾乃が微笑む。


「風情がございますわ」


第一ラウンド。


のどか、紫のしゃもじを胸元で静かに掲げる。


完璧。


観客、息をのむ。


次、梨乃。


ポーズを取った瞬間、しゃもじがポトッ。


カラン…


失格。


「音出た!」


本人は真顔。


観客、必死で笑いをこらえる。


第二ラウンド。


みのり、優雅な無音ターン。


ひかり、ゆっくりとしゃもじを空へ。


美しい。


ノムさんが感動気味。


「これは……芸術だ」


だが三ラウンド目、梨乃がまたやらかす。


無音ポーズのつもりが、なぜか小さく


「よいしょ」


その一言でアウト。


観客爆笑寸前。


しかし不思議と、空気は軽やかだ。


笑いはあるが、騒がしくない。


のどかがマイクを持つ。


「平和ってのは、騒がんでも伝わるもんじゃ」


ノムさんもうなずく。


「今日は、ヒロヒロらしくない回だな」


動画配信は過去最高クラスの同時視聴。


コメント欄。


「静かなヒロヒロもいい」

「なんか考えさせられる」

「広島らしい」


最後は全員で無音しゃもじ掲揚。


誰も叩かない。


ただ、掲げる。


のどかが静かに言う。


「今日の音は、心の中で鳴らしてくれ」


梨乃が小声で。


「静かって、むずかしいね」


「そうじゃの」


イベント終了後、観客は自然と平和について話し始める。


「子どもと来てよかった」

「ちゃんと考えたい」


ノムさんが少し照れたように言う。


「たまには真面目も悪くない」


のどかが笑う。


「ヒロヒロは遊ぶけど、忘れん」


帰り道、梨乃がつぶやく。


「次は叩いていい?」


のどかが即答。


「次は叩け」


爆笑。


ヒロヒロはやっぱりヒロヒロ。


だがこの日は、しゃもじを鳴らさなかった。


紫は、静かに光っていた。

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