因幡の太陽、ついに垢抜ける!?山根梨乃・ドラッグストアコーデ卒業大作戦
山根梨乃は、今日もだいたい同じ格好だった。
ゆるっとしたTシャツ。
どこかのキャンペーンでもらったようなエコバッグ。
足元は履きつぶしたスニーカー。
色味は全体的に「くすみ」。
本人は気にしていない。
「楽なんが一番やけぇ」
だがここは戦隊ヒロイン。
人気商売である。
ヒロ室スタッフが言う。
「山根さん、もう少し……その……」
のどかがドギツイ広島弁で追撃する。
「お前、その格好で大学も行きよるんじゃろ?」
「うん」
「そのままドラッグストア寄るんじゃろ?」
「うん」
「新幹線も?」
「うん」
広島から上京したときの衝撃は凄まじかった。
新橋駅に降り立った梨乃。
Tシャツ、リュック、スーパーのビニール袋(梨入り)。
ヒロイン達、絶句。
「え……その格好で新幹線乗ってきたの?」
「うん」
爆笑。
梨乃はきょとん。
「何が?」
戦隊ヒロインとしては、かなり野暮ったい。
太陽のように明るいが、ファッションは曇天。
そこで立ち上がったのが――
浜崎莉央。
博多出身、元セレクトショップ店員、スタイリスト兼任ヒロイン。
梨乃をじっと見て、にこっと笑う。
「梨乃ちゃん、その服ばり可愛いっちゃけど……」
一瞬、希望が見える。
「もうちょっと垢抜けたら、もっと可愛かよ?」
優しい。
梨乃、首をかしげる。
「垢抜けるって、どうやるん?」
莉央、目がキラリ。
「任せてほしか〜」
翌日、即席コーディネート講座。
ヒロ室会議室が簡易試着室に。
莉央が梨乃の服を一枚ずつチェック。
「このTシャツ、悪くなかけど丈が中途半端やね」
「これパジャマ?」
「ちがう!」
「そのエコバッグは封印ね」
「便利やのに」
莉央はくるくると梨乃の周りを回る。
「梨乃ちゃんは元気が売りやけん、色は明るめがよかよ」
「派手なん?」
「派手やなくて“映える”と」
新しい言葉が出てくるたびに梨乃は目を丸くする。
「映えるって光るん?」
「気持ちが光ると」
よく分からないが、なんだか楽しい。
試着。
シンプルな白ブラウス。
淡いパステルカラーのスカート。
足元はきれいめスニーカー。
鏡の前に立つ。
「……誰?」
ヒロイン達、拍手。
「おお!」
のどかが腕を組む。
「因幡の太陽がちょっと都会の光になったの」
梨乃は照れる。
「なんか足元スースーする」
「それがスカートたい」
莉央は笑う。
「梨乃ちゃんは素材がよかけん、ちょっと整えるだけで全然違うっちゃ」
梨乃は真顔。
「うち、素材よかったん?」
「ばりよかよ」
そこから徐々に変化。
通学コーデも改善。
ドラッグストア直行スタイル卒業。
新幹線も少しだけ自信ありげに乗れる。
だが――
根本は変わらない。
ある日、きれいめコーデでヒロ室に現れた梨乃。
しかしリュックの中から出てきたのは。
梨。
「おやつ!」
全員爆笑。
莉央も笑う。
「そこは変わらんでよかよ」
垢抜けたが、因幡の太陽はそのまま。
のどかがつぶやく。
「まあ、前よりはマシじゃ」
梨乃は胸を張る。
「うち、ちょっと都会になった?」
莉央がウインク。
「だいぶ可愛くなったばい」
梨乃、満面の笑み。
「ほな次はサングラス買う!」
「それはまだ早か!」
こうして、因州ネアカ娘は少しだけ進化した。
戦術はまだ苦手。
頭も相変わらず。
だがファッションは一歩前進。
因幡の太陽、都会仕様。
ヒロ室は今日も明るい。




