広島支部長、動く!因州ネアカ娘・山根梨乃スカウト大作戦
江波のどかは、今日も胸を張っていた。
「うちは戦隊ヒロインプロジェクト広島支部長じゃけぇ」
そんな役職は存在しない。
だが、ヒロ室スタッフもヒロイン達も、誰も否定しない。
なぜなら、のどかは本気だからだ。
広島が好きすぎる。
元カープ女子。
だが最近は少々沈み気味。
「今はサンフレじゃ。うちには紫の血が流れとる」
Bリーグのドラフラもチェック済み。
戦隊ヒロインよりスポーツの試合日程を優先しかねない勢いだ。
そんなのどかに、遥室長が穏やかな駿河弁で言ったことがある。
「中国地方での展開もさ、そのうちちゃんと考えてくつもりだよ。中心は、のどかさんにお願いすることになると思うだよ。」
のどか、即その気。
「任せんさい」
だが現実は厳しい。
戦隊ヒロインイベントは西日本といえば関西中心。
大阪、神戸、京都。
岡山? 年一回。
広島? 下手すりゃゼロ。
のどかは悩んでいた。
「中国地方、ナメられとる」
広島支部長(自称)として、これは由々しき事態。
「仲間が必要じゃ」
そしてスカウティング活動を始めた。
ターゲットは、同じ大学のゼミ仲間。
山根梨乃。
鳥取市出身。
底抜けに明るい。
ちょっと、いや結構おバカ。
講義中でも笑う。
発表でも笑う。
ゼミの飲み会でもずっと笑う。
だが根は悪くない。
ある日、学食でのどかは切り出した。
「梨乃」
「んー?」
「戦隊ヒロイン、やらんか?」
梨乃、箸を止める。
「何それ? 美味しいの???」
因州弁全開。
のどか、真顔。
「美味しくはない。戦うんじゃ」
梨乃、目を丸くする。
「戦う? 誰と?」
「怪人」
「は???」
学食の空気が一瞬止まる。
だが梨乃はすぐに笑った。
「えーおもろそう!」
のどかが説明する。
地域活性。
イベント。
ヒロイン活動。
梨乃は半分も理解していない。
「東京も行くことになる」
その一言で、梨乃の目が輝いた。
「東京!? 行ったことない!」
のどか、少し不安になる。
「面談あるけぇな」
「面談? 就活みたいな?」
「まあ似たようなもんじゃ」
「ほな行く!」
軽い。
軽すぎる。
のどかは眉をひそめる。
「何するか分かっとるんか?」
梨乃、首を傾げる。
「え、テレビ出るん?」
「出ることもある」
「じゃあ行く!」
理由が雑。
だが勢いはある。
数日後、東京行きの新幹線。
梨乃は窓に張り付いている。
「広島すぐ終わった!」
「まだ岡山じゃ」
「東京って砂丘ある?」
「ない」
「じゃあ何あるん?」
「ビル」
「へぇー」
のどかは心の中で呟いた。
(大丈夫か、この子)
ヒロ室に到着。
梨乃、キョロキョロ。
「ここが戦隊ヒロインの本部!?」
のどか、胸を張る。
「うちの本拠地じゃ」
広島支部長の顔になる。
面談室へ。
梨乃、椅子に座るや否や質問。
「戦隊ヒロインって給料出るん?」
ヒロ室スタッフ、沈黙。
のどか、頭を抱える。
「まずそこか!」
だが梨乃は悪びれない。
「だって大事やん!」
確かに。
遥室長が穏やかに微笑む。
「まずは、やる気を見せていただけますか?」
梨乃、真顔。
「やる気ならあります!」
「何に対して?」
「東京!」
のどかが叫ぶ。
「戦隊ヒロインじゃ!」
爆笑が起きる。
面談室の空気が一気に和む。
ヒロ室スタッフが小声で言う。
「…明るい子ですね」
のどかはため息をつきながらも、少し誇らしい。
「こいつ、根性はあるけぇ」
梨乃はまだ分かっていない。
怪人も、任務も、責任も。
だがその明るさは、確実に空気を変える。
のどかは確信した。
「中国地方、動くで」
広島支部長、初のスカウト成功(仮)。
因州ネアカ娘・山根梨乃。
東京観光気分で乗り込んだこの日が、
やがて中国地方を巻き込む騒動の始まりになるとは、
本人はまだ知らない。
ただ一つ分かっているのは――
広島と鳥取が手を組んだら、
静かには終わらない。
戦隊ヒロイン、中国地方編。
波乱の幕開けである。




