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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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567/700

完全無欠300のその後――深夜レーンは今日も予算不足

あの夜、「スーパースターボウリング」で番組史上初のパーフェクト300を達成した塩原結花。

テレかん史に刻まれた奇跡の瞬間は、翌朝から妙な方向へ転がり始めた。


まず話題になったのは、結花でもピンでもなく――


ノムさんのガッツポーズだった。


パーフェクト達成の瞬間、観客席で誰よりも大きく跳ね上がり、両腕を天に突き上げ、膝を曲げて三段跳びのような動きを見せた男。


しかも結花は自社タレントではない。


ブラックキャッププロダクション社長・野村吉彦。


カメラは偶然にもその一部始終を正面から捉えていた。


スロー再生。


「革命だぁぁぁ!!」


口が完全にそう動いている。


翌日のネットニュース見出し。


「パーフェクトより社長の跳躍が話題」


SNSではGIF化。


“野村ジャンプ”というタグが爆誕。


本人は満面の笑みで言う。


「俺は確信していた!」


スタッフは小声で。


「いや、たまたまカメラに映っただけです」


だが、結花の快挙は本物だった。


テレかんの重役会議。


「番組レギュラーでどうだ」


「スポンサーは増えてないけど」


「話題性がある」


こうして結花は正式レギュラーに昇格。


さらに新コーナー誕生。


「塩原結花のワンポイントレッスン」


セットは簡素。


背景パネルは裏返せば他番組と共用。


照明は一本だけ角度がズレている。


それでも結花は凛と立つ。


「ごきげんよう。本日は“安定したリリース”についてでございます」


高原のそよ風のような微笑。


上品な発声。


だが、スイッチが入ると。


「そこ、腰落とすっぺ!」


突然の栃木弁。


視聴者、ざわつく。


「誰だ今の!?」


ギャップが話題になる。


有名プロボウラーもゲストで登場。


「正直、最初は話題先行だと思ってました」


しかし結花の理論は本物。


「体幹を固定して、重心をぶらさないことが肝要ですわ」


その後、


「ぶれたらダメだんべ!」


二重人格ではない。


真剣なだけだ。


視聴率は2%台後半で安定。


テレかんにとっては大事件。


だが予算は増えない。


スポンサーは相変わらず、


・微妙な消費者金融

・健康グッズ通販

・自社番宣


CMの半分は「次回も見てね」。


タレントが足りない週。


プロデューサーが言う。


「どうする?呼ぶ人いないぞ」


そこに現れるノムさん。


「俺が出る!」


元俳優、ギョーカイでは有名人。


妙に芝居がかって投げる。


ガーター。


「革命は来週だ!」


スタッフ失笑。


さらに別の週。


ヒロ室の隼人補佐官(元大学アメフト快速ランニングバック)が呼ばれる。


「ボウリング?余裕っす」


助走が長すぎてファウル。


「ライン超えてます!」


「癖なんだよ!」


スタジオ爆笑。


テレかんは節約の鬼。


ケータリングは紙コップと市販ドーナツ。


プロボウラーも苦笑い。


それでも結花は全力。


「どんな環境でも、レーンは神聖でございます」


その真剣さが、じわじわと伝染する。


落ち目俳優が練習するようになり、


一発屋芸人がフォームを研究し、


定年間近アナの声に張りが戻る。


ある日、スタッフがつぶやく。


「この番組、続くかもな」


ノムさんは今日も客席で言う。


「世界だ!次は世界!」


誰も真に受けない。


だが誰も笑わなくなった。


結花は静かにボールを磨く。


「パーフェクトは通過点ですわ」


そして、少しだけ。


「やるっぺ」


低予算でも。


スポンサーが怪しくても。


蛍光灯がチカチカでも。


レーンの上では平等。


深夜のボウリング番組は、今日も転がり続ける。


革命は、いつも予算不足から始まるのかもしれない。

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