深夜1.8%の奇跡ふたたび!那須のお嬢様、低予算番組を救う
東京の外れ、雑居ビルの三階。
そこに本社を構えるのが――
テレビ関東(通称:テレかん)
一応民放キー局。
ロゴはどこか見覚えがある。
色使いも、配置も、何かに似ている。
だが予算は決定的に違う。
社内のコピー機は時々止まり、
スタジオの蛍光灯は一列だけ色味が違う。
そんなテレかんの深夜帯を支える長寿番組がある。
「スーパースターボウリング」
スポンサーは少ない。
・地味な消費者金融
・怪しげな健康通販会社
・そして残りのCMは、ほぼ自局の番宣
つまり、実質ノースポンサー。
打ち切り間近。
だが。
前回の放送が、まさかの好評だった。
理由はひとつ。
塩原結花。
そして氷見ゆりえ。
戦隊ヒロインチームの参戦。
さらに裏では――
ブラックキャッブプロダクション社長、野村のねじ込み力。
「準レギュラーでいこう!」
という半ば強引な営業。
こうして。
結花とゆりえ(たまに麗奈)が、
正式に“準レギュラー”となった。
初回収録。
スタジオは相変わらず地味。
紅白歌手、俳優、芸人、アイドル。
いつもの面々。
司会の定年間近アナは、今日も静かに原稿を読む。
「えー、本日のゲストは……あ、もうゲストじゃないんですね」
そう、レギュラーに近い。
しかし現場はやる気ゼロ。
スタッフの会話。
「この番組、あと何回だろうな」
「テレかん、今年赤字らしいぞ」
結花はそれを聞いて、胸が熱くなる。
(レーンが泣いておりますわ)
本気でプロを目指す者にとって、
レーンは神聖。
低予算でも、
蛍光灯がチカチカでも、
ピンは真剣に倒さねばならない。
収録開始。
紅白歌手、ガーター。
芸人、すべる。
俳優、フォームが崩れる。
空気が冷える。
結花、立ち上がる。
「本日は、全力で参りますわ」
助走。
低く。
安定。
リリース。
ガシャァン!!
ストライク。
拍手が起きる。
ゆりえも続く。
「結花ちゃん、いけるよ〜!」
麗奈が時々参戦すると、場の華やかさが増す。
芸人が言う。
「戦隊ヒロイン、強すぎだろ!」
結花は真剣。
「強くなければ、意味がございませんわ」
その目は本物。
徐々に空気が変わる。
芸人が本気で投げる。
俳優がフォームを研究する。
紅白歌手が「もう一回やらせて」と言い出す。
司会アナの声にも、わずかに張りが戻る。
「これは…熱い展開ですね」
スタッフがざわつく。
「今日、なんか違うぞ」
カメラマンの動きが良くなる。
音声も前のめり。
結花の熱が、伝播する。
控室。
スタッフの若手が言う。
「正直、この番組どうでもいいと思ってました」
結花は真顔で言う。
「レーンは、どうでもよくございませんわ」
沈黙。
「わたくし、本気でプロになります」
その言葉が、静かに刺さる。
数週間後。
視聴率は1.8%から、2.3%へ。
たった0.5%。
だがテレかん社内は大騒ぎ。
「上がったぞ!」
「奇跡だ!」
「若者の野党第一党の支持率よりずっと高いぞ!」
誰かが言う。
「比較対象やめろ」
だが確実に、好循環。
スポンサーが一社増える。
微妙な中古車販売店。
それでも前進。
ノムさんは今日もボウリング場に来ている。
「言っただろ!革命だ!」
スタッフは慣れた顔。
「はいはい、野村ラッパ」
だが今回は少し違う。
誰も完全には否定しない。
番組に、覇気が戻ってきたからだ。
最終フレーム。
結花は静かに構える。
「低予算でも、全力ですわ」
投球。
ガシャァン!!
ストライク。
拍手。
司会アナが微笑む。
「番組、まだ続けましょうか」
十数年ぶりに、スタジオが笑いに包まれる。
結花は静かに言う。
「わたくし、プロになりますわ」
そして小さく。
「やるっぺ」
テレかんの深夜に、
確かな熱が宿った。
予算はない。
スポンサーも少ない。
だが、情熱はある。
那須のお嬢様は今日もレーンに立つ。
低視聴率番組を、
ストライクで救いながら。




