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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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562/697

気品か破壊力か!?那須のお嬢様、レーンを制す!

那須高原の朝は澄んでいる。

その澄みきった空気の中、塩原結花は今日も優雅にボールを構えていた。


「参りますわ」


助走は完璧。

背筋はまっすぐ。

スカートの裾がふわりと揺れる。


投球。


ころ……。


ピンが、三本だけ、遠慮がちに倒れた。


静寂。


るみねぇが腕を組む。


「……結花、社交界の挨拶じゃねぇんだっぺ」


すみれコーチは深くうなずく。


「優雅すぎる。ピンに遠慮してどうする」


結花は首をかしげた。


「わたくし、全力でございますのよ?」


「その“全力”が上品なんだ!」


こうして始まったのが――

那須高原フォーム改造計画である。


すみれコーチは、M大卒。

現在もバリバリ体育会系のノリで知られる鬼教官だ。


M大といえば、かつて“島岡御大”と呼ばれた伝説の野球部監督が率いた剛腕軍団の系譜を継ぐ大学。

御大は「心が折れたら負けだ」と叫び、グラウンドを軍隊さながらに鍛え上げた人物として語り草になっている。


その魂を、すみれは今も胸に宿している。


「ボウリングは格闘技だ!」


結花、目を丸くする。


「ピンは敵だ!」


「敵……ですの?」


「甘いフォームは通用せん!」


那須高原のボウリング場は、いつの間にか訓練基地と化した。


まずは体幹強化。


「馬に乗るように構えろ!」


「乗馬の応用ですのね!」


「違う、もっと低く!」


スクワット百回。


るみねぇが横で笑う。


「お嬢様、顔が真っ赤だべ」


「だ、だいじょうぶですわ……!」


次は雪道ダッシュ。


那須の冷たい空気を切り裂いて走る。


「足腰は武器だ!」


「は、はいっ!」


お嬢様の息遣いが荒くなる。


その姿はすでに“優雅”とは程遠い。


一方、るみねぇは技術面を徹底指導。


「肘、開きすぎだっぺ。もっと自然に振れ」


「自然……自然……」


「ボールを置きにいくな。連れていけ」


「連れていく……?」


「そうだ、レーンの向こうまで、覚悟ごと連れてけ」


結花は真剣だ。


投げる。


今度は少しスピードが出た。


ピンが六本倒れる。


「よし!」


すみれコーチが叫ぶ。


「今のだ!」


だが、まだ足りない。


優雅さと破壊力、その両立。


それがテーマだ。


数週間後。


フォームは変わった。


助走は安定。

腰は低く。

リリースは鋭い。


るみねぇがにやりと笑う。


「いくべ、本番」


結花、深呼吸。


「那須の風とともに……参りますわ」


投球。


ボールが滑る。


美しい弧を描く。


ガシャーン!


ストライク。


場内がどよめく。


結花は、ぽかんとする。


「……全部、倒れましたわ」


すみれコーチ、腕を組む。


「それだ。気品を捨てるな。ただ、甘さを捨てろ」


るみねぇも満足げだ。


「な?言ったべ。結花、伸びるって」


結花は静かに頷く。


「わたくし……強くなれますのね」


「もうなってるっぺ」


アベレージは明らかに上昇していた。


最初は100台前半。

今は160台後半。


安定している。


そして何より、投球に迷いがない。


最後の仕上げ。


すみれコーチが言う。


「御大はな、“魂で振れ”と言った」


結花は小さく笑う。


「ではわたくしも、魂で投げますわ」


助走。


集中。


「いざ……!」


ボールは、力強く、しかし美しく転がる。


ストライク。


その瞬間、少しだけ栃木弁が混じる。


「……やるっぺ」


るみねぇが吹き出す。


「出たな栃木!」


那須の高原に、ピンの倒れる音が響く。


気品はそのままに、破壊力を手に入れたお嬢様。


こうして塩原結花の“鮮やかなフォーム”は完成した。


戦隊ヒロイン兼プロボウラー。


レーンは戦場。


ピンは敵。


そしてお嬢様は今日も、堂々と構える。


「わたくし、必ずプロになりますわ」


一拍置いて、


「だんべ」


那須高原に、新たな伝説が静かに転がり始めていた。

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