【きのこ・たけのこ戦争】 第二部・理論戦 統計か、情熱か――ヒロ室大決戦!甘味データ戦争
ヒロ室の会議室。
本来ならば、次の大型イベントの動線確認と警備計画の詰めが行われるはずだった。
ホワイトボードには、
「各省庁合同フェス・導線案」
と書かれている。
だがその横に、誰かが書き足していた。
「きのこ vs たけのこ 第二次理論戦」
……終わっている。
美月が腕を組む。
「感情論ちゃうで。今日は“理論”でいく」
彩香が鼻で笑う。
「望むところや。合理で叩き潰したる」
机の中央には、両陣営の菓子が鎮座。
まるで国際会議の国旗だ。
最初に立ち上がったのは、千葉の叡智・館山みのり。
プロジェクターを起動。
「たけのこは、ビスケット部分の面積比が高く、チョコとの一体感が優れている。これは“完成形”です」
スライドには円グラフ。
“食感満足度 82%”
「アンケートは誰に取ったんや!」
彩香が叫ぶ。
「私です」
ひかりが静かに手を挙げる。
「きのこは、軸構造による持ちやすさが優れています。指先の温度伝達率も低い。理にかなっています」
謎の棒グラフが表示される。
“溶解リスク比較”
「溶ける前提で食べへんやろ!」
美月が机を叩く。
ここで心理戦。
港区女子・柏木理世が立ち上がる。
「きのこを選ぶ人は、洗練された感性を持つ傾向があると言われています」
「誰が言うとんねん!」と小春。
「私です」
自信満々。
対する美月は情に訴える。
「たけのこはな、子供の頃の遠足の思い出やねん。サクッて食べてな、友達と分け合うねん」
「情緒で押すなや!」彩香が怒鳴る。
甲斐の疾風・琴音が淡々と語る。
「戦隊ヒロインプロジェクトは金はねえけど夢はあるじゃんけ。きのこは夢の形じゃんけ」
「意味が分からん!」
遥室長が頭を抱える。
心理操作に出たのは麗奈。
「たけのこ派は、仲間思いが多いらしいわ」
「データは?」理世が問う。
「雰囲気よ」
完全に感覚。
その隣で、経理のけちのんが静かに言う。
「どっちもセール時は同価格です」
一瞬、全員が黙る。
だが戦争は止まらない。
水無瀬澪が突然ホワイトボードに書く。
「きのこは“軸”。たけのこは“土台”。社会構造の比喩では?」
「何の授業やねん!」美月。
森川美里は映え論を展開。
「写真映えはきのこ」
「いや断面萌えはたけのこやろ!」
議論は完全にカオス。
隣のパーティションの向こうでは、
各省庁からの電話が鳴り続けている。
隼人補佐官が小声で言う。
「イベントの警備計画は……?」
誰も聞いていない。
ここで決定打を狙う彩香。
「きのこはな、芯があるんや。軸がある人間は強い」
播州弁が低く響く。
だが美月は負けない。
「たけのこはな、包容力や。土台があるから立てるんや!」
二人、机を挟んで睨み合う。
グレースフォースの二人は真顔でメモを取っている。
みのり「社会心理学的に興味深い」
ひかり「集団同調圧力が発生していますね」
戦争を分析するな。
そのとき、ドアが開く。
波田顧問が入ってくる。
「お前ら、何やってんだ?」
全員一斉に振り返る。
美月「理論戦です」
彩香「データ検証や」
みのり「社会構造の再定義」
ひかり「甘味文化の未来です」
波田顧問、三秒沈黙。
「……イベントは?」
全員、同時に固まる。
ホワイトボードの“導線案”は半分消され、
“きのこ優位説”と書かれている。
遥室長が静かに言う。
「……続きは休憩後にしましょうか」
だが休憩後も再開するのは、イベント会議ではない。
第三次理論戦である。
ヒロ室は今日も大真面目だ。
国家案件を抱えながら、
甘味の覇権を巡って統計と情緒をぶつけ合う。
そして誰も気づいていない。
本当の勝者は、
売上が伸びた菓子メーカーかもしれないということを。
――理論戦、終結せず。




