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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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554/705

データは嘘をつかない、でも愛はもっと嘘をつかない ― 茅場町ナイト・リコンストラクション

茅場町。

日本橋川と隅田川に挟まれた金融街。証券会社のビルが並ぶ一方で、昔は鶏肉問屋が軒を連ねていた名残から、いまもやたらと鶏料理がうまい。路地を曲がれば小さな神社。温故知新。数字と信仰が同居する街。


その夜、その街の“数字”が狂った。


ジェネラス・リンク傘下のハッカー集団が、証券取引システムに不正侵入。株価データが改ざんされ、パニック寸前。


現場に立つのは、グレースフォース。


静の杉山ひかり。

動の館山みのり。


「データは嘘をつきません。つくのは人です」


ひかりがノートPCを開く。

街灯の下、青白い光が眼鏡に反射する。


みのりは腕を組み、ビルを見上げた。


「なら、その嘘つきは私が捕まえる」


「物理担当、お願いします」


「知性担当は?」


「真実を掘り起こします」


二人はエントランスへ。警備は無力化済み。エレベーターを使わず、階段を駆け上がる。


「息、乱れてない?」


「あなたとなら、いくらでも」


「そういうの、任務中に言う?」


「事実です」


最上階。

サーバールーム。無数のLEDが瞬く。


敵のリーダーが笑う。


「理知派コンビか。数字で勝てると思うな」


ひかりは即答。


「あなたの改ざん、粗いです」


キーボードが走る。

ログ解析。タイムスタンプの微妙なズレ。アルゴリズムの癖。


「ここ。誤差0.003秒。あなたの焦りです」


「なっ…!」


その瞬間、みのりが動く。


「焦ると足元が甘くなる」


回し蹴り。敵の武器が弾かれる。


「静の杉山が詰めて、動の館山が仕留める。役割分担ってやつ」


だが敵は嘲笑う。


「株価が乱れれば社会は混乱する。愛だ友情だ言ってる暇はない」


空気が変わる。


みのりが一歩前に出る。


「千葉の経済規模、なめないで」


「そこ?」


ひかりが淡々と補足。


「千葉県の製造品出荷額は全国上位です」


「フォローの仕方!」


敵が逃走を図る。

非常階段へ。


二人は追う。


「ひかり、右!」


「左は任せます」


足音が夜の金融街に響く。

ビル群の間を抜け、川沿いの遊歩道へ。


ネオンが水面に揺れる。


敵が振り返る。


「お前ら、互いに弱点だろ?」


沈黙。


みのりが笑う。


「違うよ」


ひかりが続ける。


「弱点ではなく、前提です」


敵が突進。

みのりが受け、ひかりが支える。


二人の距離はゼロ。

呼吸は一つ。


「ひかり」


「はい」


「もし私が間違っても」


「あなたは戻ってきます」


「絶対?」


「絶対です」


敵が崩れる。

手錠がかかる。


サイレンが近づく。


夜の茅場町。

焼き鳥屋から香ばしい匂い。


みのりが笑う。


「任務後の親子丼、どう?」


「糖質は控えめに」


「堅いなあ」


ひかりがふと立ち止まる。


「みのり」


「ん?」


「データは嘘をつきません。でも」


「でも?」


「愛は、もっと嘘をつかない」


みのりが目を細める。


「それ、口説いてる?」


「事実を述べています」


二人は並んで歩き出す。

金融街の夜風がコートを揺らす。


背後のビル群が静かにそびえる。


みのりが軽く肩をぶつける。


「杉山」


「なんですか」


「次も、数字より速く動ける?」


ひかりはわずかに微笑む。


「あなたが走るなら」


一拍。


「私は必ず、隣にいます」


川面にネオンが揺れる。


茅場町の夜は冷たい。

だが、その隣だけは熱い。


二人は振り返らない。


「相棒」


「はい、館山」


「悪くない夜だ」


「ええ。悪くありません」


金融街の灯りを背に、

静と動は、また並んで歩き出す。


データは真実を語る。

でも――


グレースフォースは、それ以上を証明する。

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