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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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553/695

港のサイレント・インフェルノ ― 灼熱の埠頭で、静と動は踊る

川崎港。

東京湾の奥、巨大なコンテナターミナルと石油タンク群が並ぶ工業地帯。昼は物流の心臓、夜は鉄と炎の影がうごめく無言の迷宮。


その夜、炎は本当に上がった。


ジェネラス・リンク傘下の武装集団が、化学プラントの制御棟を占拠。港湾エリアは封鎖。火の粉が舞う中、グレースフォースの二人が現場に降り立つ。


静の杉山ひかり。

動の館山みのり。


「風向き、北北東。延焼リスクは限定的。でも時間はない」


ひかりがタブレットを閉じる。冷静、正確、感情は凪。


みのりは火の手を見上げる。


「燃えるのは倉庫だけで十分。人は燃やさせない」


遠くで爆ぜる音。敵が制御弁を盾に立てこもっている。


「静かに行こう」


ひかりの声は低い。

二人はコンテナの影を滑るように進む。鉄骨の迷路。足音は最小。呼吸は同期。


「ひかり、右」


「了解」


みのりが飛ぶ。ひかりが伏せる。二人の動きはまるで編集済みのアクション映画。いや、編集不要だ。


敵の一人が振り向く。


「女二人かよ!」


その瞬間、ひかりが淡々と答える。


「統計的に、判断ミスです」


膝を払う低い蹴り。みのりの回転肘。

二人の連携は言葉がいらない。


だが、奥の制御室で爆発音。


「ひかり!」


みのりが叫ぶ。煙が上がる。


ひかりは一瞬、目を細めた。


「みのり、制御弁は私が止める。あなたは敵主力を抑えて」


「逆じゃない?」


「今日は静が前、動が後ろ」


みのりがニヤリと笑う。


「了解、バディ」


制御盤の前でひかりが指を走らせる。

解除コードを逆算。圧力を分散。冷却系を再起動。


「3、2、1――今」


同時に、みのりが高所から跳ぶ。


「房総大演舞!」


炎の逆光の中、シルエットが弧を描く。敵の武器が弾かれ、床に散る。


「千葉の舞は、港でも踊る」


「かっこつけすぎ」


「だってひかりが見てるから」


制御盤が安定音を鳴らす。炎は鎮まる。

火は消え、夜風だけが戻る。


最後の敵が叫ぶ。


「千葉も静岡も同じだろ!」


空気が凍る。


ひかりの眼鏡が光る。


「違います。歴史も産業構造も文化資本も――」


「今そこ?」


みのりが苦笑しつつ敵を拘束。


「でもね」


ひかりは一歩前に出る。


「千葉を侮辱するのは、許されない」


みのりが一瞬、固まる。


「それ、私のセリフ…」


港の夜景が背後で瞬く。タンク群の灯りが水面に揺れる。


サイレンが遠くから近づく。


二人は並んで歩き出す。


「今日はひかり、ちょっと熱かったね」


「炎が近かったので」


「違う。私のこと」


沈黙。


そして、ひかりが小さく笑う。


「あなたが無茶するからです」


「守られた?」


「当然です。バディですから」


「バディ、ね」


二人は立ち止まる。

炎の消えた埠頭で、風がコートを揺らす。


みのりが肩をすくめる。


「ひかり」


「なに?」


「次も一緒に踊る?」


ひかりは夜景を見つめたまま答える。


「あなたが動くなら、私は静でいる」


少し間。


「そして、最後は必ず隣にいる」


みのりが笑う。


「やっぱりさ」


「?」


「最高の相棒だよ、杉山」


ひかりは横目で見る。


「館山も」


パトカーのライトが二人を照らす。


だが、振り向かない。


夜の港を背に、二人は歩き出す。


炎は消えた。

でも、静と動の火は、まだ消えない。


川崎港の夜は深い。

だがその闇を切り裂くのは、いつだって――


グレースフォースだ。

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