表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

552/697

ブルーライン・ノクターン ― 静と動、二人だけの追跡線

湾岸の夜は、言い訳をしない。


巨大倉庫が並ぶ人工島エリア。

海風に揺れるクレーンの影の下、黒塗りの車列がブルーラインを逃走していた。背後でサイレンが遠ざかる。


そのさらに後方、低く唸るエンジン音。


ハンドルを握っているのは、駿河の良心・杉山ひかり。


四輪駆動のターボ車が、夜のアスファルトを静かに、しかし鋭く裂いていく。無駄なアクセルワークは一切ない。ブレーキは点で踏む。ハンドルは切るのではなく、滑らせる。


助手席で端末を操作するのは、千葉の叡智・館山みのり。


「敵車、3台。先頭が陽動、2台目が本命。3台目は囮だね」


「了解。本命を捕まえる」


ひかりの声は凪いだ海のように落ち着いている。


その瞬間、無線が入る。


《こちら蒼牙2000・改。追尾確認。唯奈だっぺ。》


ひかりは短く答える。


「唯奈、次の高架分岐で右に振らせる。わたしが圧をかけるから、あなたは逃走ルートを潰して」


《了解。蒼牙、演算開始。》


蒼牙2000・改が別ルートから並走する。

人工島を囲む外周道路。逃げ場は限られている。


敵車が急加速。


「ひかり、来るよ」


「想定内」


ひかりはアクセルを踏み込む。ターボが息を吹く。

車体がわずかに前傾し、直線を矢のように伸びる。


並走。

ミラー越しに敵ドライバーと目が合う。


そのとき、敵の窓から声が飛ぶ。


「静岡の女に追えるかよ!」


空気が変わった。


みのりがちらりと横を見る。


ひかりは、微笑んだ。


「事実誤認です。静岡は製造品出荷額、国内上位。自動車関連技術の集積度も――」


「今プレゼンしてる場合!?」


だが、その理詰めの冷静さこそが合図だった。


みのりの目が細くなる。


「ひかりをバカにするのは、ダメだよ」


助手席のドアが開く。


走行中。


「ちょっと待って!?」


次の瞬間、みのりは滑るように路面へ降り、側道を駆け上がり、高架の歩道へ。敵車の進路を先回りする。


「唯奈、今」


《了解。蒼牙、封鎖モード。》


蒼牙2000・改が前方に回り込み、ブレーキランプを点灯。

ひかりは絶妙な間合いで後方を塞ぐ。


完全包囲。


逃げ場ゼロ。


敵が慌ててハンドルを切る。


その瞬間、高架上からみのりが跳ぶ。


「房総――」


着地と同時に回転蹴り。


「大演舞ッ!」


ドン、と鈍い衝撃。

敵車はスピンし、縁石に乗り上げ停止。


静寂。


ひかりはゆっくり車を降りる。


みのりが軽く肩で息をしている。


「無茶するなって言ったよね」


「だって、ひかりが後ろ守ってくれるから」


その一言で、ひかりの表情が柔らかくなる。


「当然です。あなたは、前線だから」


みのりがにやりと笑う。


「静の杉山、動の館山。いいコンビでしょ?」


無線から唯奈の声。


《正直に言います。二人のアイコンタクトは理解不能です。》


蒼牙2000・改が機械音声で補足する。


《戦闘効率128%。感情同期率、解析不能。》


「解析しなくていいの」


ひかりがさらりと言う。


敵を拘束し終え、二人は並んで夜景を眺める。


湾岸の灯りが水面に揺れる。


「ねえ、ひかり」


「なに?」


「さっき怒ってた?」


「少しだけ」


「静岡ディスられて?」


「いいえ」


ひかりはまっすぐみのりを見る。


「あなたを侮辱されたから」


一瞬、夜風が止まった気がした。


みのりの耳が赤い。


「そ、そういうの…ズルいよ」


「事実です」


遠くでパトカーのサイレンが鳴る。


任務完了。


唯奈が車体から顔を出す。


「次はもっと穏やかな任務がいいですね」


蒼牙2000・改が締めくくる。


《提案:車内温度上昇の原因は外気ではありません。》


ひかりとみのりは顔を見合わせ、笑った。


ブルーラインの夜は深い。


だが――


二人の包囲網は、今夜も完璧だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ