GRACE FORCE:72 HOURS IN THE SHADOW ― 愛が兵站を超える時
海でも空でもない。
都心からほど近い湾岸エリアの地下、巨大物流倉庫のさらに下に眠る謎の施設。コンクリートの壁、低い天井、非常灯だけが淡く点滅する閉鎖空間。
ジェネラス・リンク傘下の武装集団が立てこもり、ヒロイン部隊が突入。
しかし――爆破で通路が崩落。前線部隊は分断。通信は途絶。
地下深部に取り残されたのは、
駿河の良心・杉山ひかり。
千葉の叡智・館山みのり。
「補給線、完全に断たれました」
ひかりが冷静に状況を整理する。
「水、二本。非常食、三袋。バッテリー残量四十八パーセント」
みのりが即座に答える。
静寂。
上から瓦礫が落ちる音。
通常ならば緊張が走るはずの空気。
しかし二人は顔を見合わせ、なぜかほほ笑む。
「みのり、七十二時間いける?」
「ひかりと一緒なら、無限時間」
百合度、初速からMAX。
地下施設は迷路のように入り組み、武装集団は各所に散開。
補給なし、応援なし。持久戦。
だがグレースフォースは焦らない。
「極限状態では感情の安定が最優先です」
「ひかりがいるから安定してる」
「私も」
周囲で敵が警戒を強める中、二人は背中合わせで座り、淡々と作戦を立てる。
第一夜。
暗闇。
ひかりが静かに言う。
「体温を維持するため、距離を縮めます」
「合理的だね」
合理的と言いつつ、自然に肩が触れる。
敵が物陰から様子を窺う。
「……なんであの二人、こんな落ち着いてるんだ?」
敵兵A、困惑。
第二日目。
水を半分ずつ分ける。
「みのり、多めに飲んで」
「ひかりが先」
「いいえ」
「いや」
敵兵B、無線で報告。
「対象、譲り合い始めました。意味不明です」
地下通路で小競り合い。
敵が包囲を試みるが、二人は目で会話。
ひかり、わずかに視線を右へ。
みのり、瞬時に左へ回り込む。
完璧なクロス。
敵が崩れる。
「なぜ声を出さない!」
「声は不要です」
「通信、心で十分」
敵、完全に理解不能。
第二夜。
バッテリー残量低下。
非常灯がさらに暗くなる。
ひかりが囁く。
「怖い?」
みのり、首を振る。
「ひかりがいる限り、孤立じゃない」
ひかり、微笑む。
「私も、孤立してる感覚がない」
百合濃度、地下水脈レベル。
敵兵Cが小声で言う。
「……あの二人、補給いらなくないか?」
第三日目。
空腹。
だが知性は衰えない。
ひかりが地下構造を解析し、換気ダクトの位置を特定。
みのりがタイミングを見計らい、奇襲。
「房総ならぬ暴走は、地下でも有効」
敵を次々と制圧。
やがて救援部隊が到着。
瓦礫を除去し、光が差し込む。
美月が駆け込む。
「大丈夫かいな!?」
彩香も続く。
「お前ら三日もおったんか!」
小春が涙目。
「二人とも痩せた!?」
ひかりとみのり、顔を見合わせる。
「三日間、楽しかったね」
「うん。静かな時間だった」
周囲、凍る。
蒼牙2000・改の無機質な声。
「報告:孤立七十二時間。精神安定度、異常に高い。解析不能」
救出後の医療チェック。
軽度の脱水のみ。
美紀が呆れ気味に言う。
「普通、もっと不安定になりますよ」
みのり、さらり。
「ひかりがいるので」
ひかりも。
「みのりがいるので」
ヒロイン達、同時に。
「はいはいはいはい」
最後に、地下施設から出た二人は夕陽を見上げる。
「三日間、同じ空は見えなかったけど」
「心は繋がってた」
みのりがそっと手を握る。
ひかりも握り返す。
遠くで美月が叫ぶ。
「もう二人だけで地下籠城すな!」
彩香が腕を組む。
「戦術的には最強やけどな」
蒼牙2000・改、最後のコメント。
「結論:補給線断絶状態でも、当該二名は百合エネルギーで稼働可能」
地下戦、勝利。
孤立七十二時間。
だが、グレースフォースにとっては。
それはただの――
二人きりの、少し静かな時間だった。




