暴徒もドン引き!?――怒れる千葉と泣き虫駿河、戦場で手を握る
都心の広場が、異様な熱気に包まれていた。
暴徒化したデモ隊。拡声器の怒号。飛び交うペットボトルと石。
「戦隊ヒロイン出てこい!」
その声に応じるように、整然と現れたのは戦隊ヒロインたち。
その中央に並ぶ、白と蒼のシンメトリー。
駿河の良心・杉山ひかり。
千葉の叡智・館山みのり。
百合ユニット「グレースフォース」出動である。
「冷静に、非暴力で制圧します」
ひかりが穏やかに呼びかける。
「話し合いで――」
ゴッ。
次の瞬間、小さな石がひかりの肩をかすめた。
「……っ」
周囲が凍る。
ひかりは膝をつくほどではない。だが確実に負傷。
その瞬間だった。
みのりの瞳の色が変わった。
「……今、ひかりに当たった?」
声は低い。静か。だが背後に黒いオーラ。
美月が小声でつぶやく。
「スイッチ入ったで」
彩香が腕を組む。
「始まるで」
みのりが一歩前に出る。
「ひかりを傷つけるのことは、許さない」
次の瞬間、空気が震えた。
「必殺――房総大演舞!」
地面を踏み鳴らす大迫力の連続回転蹴り。舞のようでありながら嵐のよう。
千葉の房総半島を象徴する大回転ムーブが炸裂する。
暴徒が一斉に後退。
「ちょ、ちょっと待て!」
「何あれ怖い!」
一人が叫ぶ。
「デモのつもりが命がけになってる!」
ドン引き。
完全にドン引き。
みのりの理知的な顔のまま放たれる圧倒的気迫に、暴徒側が心理的崩壊。
結果、鎮圧完了。
ヒロイン側、軽傷一名。
ひかりは肩を押さえながら苦笑する。
「大丈夫だよ、みのり」
だがみのりは聞いていない。
「救護班!」
そこへ颯爽と駆けつける看護学生・松本美紀。
「落ち着いてください、軽い打撲です」
冷静な信州仕込みの処置。
だがみのりはひかりの手を握ったまま離さない。
「痛い?」
「平気?」
「本当に平気?」
美紀が苦笑。
「館山さん、落ち着いて」
ひかりが小さく笑う。
「みのり、近いよ」
みのり、さらに近づく。
「離れない」
周囲、ため息。
そこへ轟音と共に現れるドリームトラクター「蒼牙2000・改」。
ドライバーは唯奈。
「搬送すっぺ、行くぞ蒼牙2000・改!」
ひかりを乗せる。
当然のようにみのりも同乗。
車内。
ひかり「本当に大丈夫だから」
みのり「医師の診断を聞くまで信用しない」
唯奈がバックミラー越しに呟く。
「……軽傷なんだっぺな?」
ひかり「うん」
みのり「軽傷でも傷は傷」
唯奈、無言。
蒼牙2000・改のAIが静かに音声を出す。
「私には理解できません」
美月が後続車から無線で叫ぶ。
「百合濃度高すぎやろ!」
病院での診察は問題なし。
打撲。安静で可。
ひかりが出てくると、待っていたみのりがすぐ立ち上がる。
「ひかり」
「みのり」
ひかり「ありがとう」
みのり「ひかりを傷つける人は絶対に許さない」
握る手が強い。
やや強すぎる。
美月が小声で。
「もう告白やん」
彩香が腕を組む。
「覚醒条件、追加やな」
覚醒要因:
①地元千葉をディスられる
②ひかりを傷つけられる ←NEW
唯奈がぼそり。
「次からは危ねぇブツより、“ひかりさん”守んのが任務になっちまうっぺよ。」
蒼牙2000・改が低く呟く。
「感情の優先順位が理解不能です」
ヒロインたちは視線を交わす。
「二人っきりにしてあげよ」
自然に距離をとる。
夕暮れ。
病院の前。
ひかりとみのりは手をつないだまま歩き出す。
ひかり「怒ってくれて、嬉しかった」
みのり「怒らせないでほしいけどね」
ひかり「でも、かっこよかったよ」
みのり、ほんの少し赤くなる。
「……ひかり限定」
後ろから見守るヒロイン一同。
美月「暴徒より怖いわ」
彩香「最強やな」
美紀「心拍数、二人とも上がってますね」
誰も触れない。
触れたら爆発する。
その夜、ヒロ室では新たな噂が流れた。
「グレースフォースは防衛特化ユニット」
「いや違う、相互過保護型ユニットや」
だが一つだけ確かなことがある。
理知的で穏やかな千葉の叡智が、
ここまで感情を爆発させるのは――
駿河の良心のためだけ。
戦場で手を握る二人。
暴徒よりも周囲を圧倒する百合オーラ。
蒼牙2000・改が最後に記録したログ。
「本日最大のエネルギー源:感情結束」
結論。
グレースフォースの真の必殺技は、
房総大演舞でもなく、
静かな理性でもなく、
「ひかりを守る」という一点突破である。
そしてヒロ室は今日も平和だった。




