仕事です(建前)~グレースフォース、模擬デートが本気案件~
戦隊ヒロイン派生ユニット「グレースフォース」。
駿河の良心・杉山ひかりと、千葉の叡智・館山みのり。
それぞれ地元の国立に通う大学生で同じ年、同じような背丈、同じような上品さ。
そして――同じくらい相手のことが大好きである。
ある日、若い女性向けのファッション雑誌から企画が舞い込んだ。
「ヒロインのオフコーデ特集。テーマは“理想のデート服”です」
真帆さんが書類を読み上げると、美月がニヤリ。
「ほなグレースフォースやろ。どう見てもデートやん」
彩香も頷く。
「普段からデートみたいなもんやしな」
ひかりとみのりは顔を見合わせる。
「デ、デートって……」
「し、仕事だよね?」
仕事である。
場所は横浜の海沿いショッピングモール。
観覧車、港の風、午後の柔らかい光。完全にデートロケーション。
スタイリストが二人を並べて唸る。
「……完成してますね」
ひかりは淡いワンピースにカーディガン。
みのりは上品なパンツスタイルにジャケット。
並んだ瞬間、自然に手が触れる。
「寒くない?」
「大丈夫だよ、みのりこそ」
撮影開始。
カメラマンが指示を出す。
「じゃあ、待ち合わせ風にお願いします」
みのりが先に立つ。
ひかりが少し離れたところから歩いてくる。
目が合う。
一瞬で空気が変わる。
柔らかい笑顔。
ほんのり頬が染まる。
スタッフがざわつく。
「……え、本物?」
次はベンチに並んで座るカット。
ひかりが小さく笑う。
「なんか照れるね」
「うん。でも、楽しい」
自然に肩が寄る。
距離、ゼロ。
ヒロ室スタッフとして同行した高島里奈が小声で呟く。
「企画、デート“風”ですよね?」
編集者が真顔で答える。
「いえ、もうデートです」
さらにカフェシーン。
「お互いに飲み物交換してみましょう」
ひかりがストローを差し出す。
「みのり、どう?」
「ひかりの、甘いね」
その言い方が甘い。
カメラマン、連写。
スタッフ、息を飲む。
周囲の一般客がヒソヒソ。
「あの二人、芸能人?」
「可愛い……本当に付き合ってるのかな」
完全に本物カップルである。
途中、観覧車に乗るカット。
密室。
向かい合う二人。
「高いね」
「でも、みのりとなら平気」
スタッフは別ゴンドラから必死に撮影。
里奈が額に手を当てる。
「これ、誌面どうなるんでしょう」
撮影終了後、編集会議。
「当初は“理想のデート服”企画でしたが……」
「“理想の彼女と過ごす休日”に変更しましょう」
方向性が変わった。
発売後。
誌面タイトル。
《理想を超えた、運命の二人》
SNS大炎上(良い意味で)。
「尊い」
「リアルすぎる」
「結婚して」
ヒロ室では美月が雑誌を振り回す。
「おい! これもう交際宣言やんけ!」
彩香も笑う。
「企画やなくて公開デートやろ」
ひかりは真っ赤。
「ち、違いますから!」
みのりは冷静を装うが耳まで赤い。
「……仕事、だよね」
里奈がぽつり。
「仕事でここまで自然にラブラブになるの、才能です」
ひかりが小さく言う。
「でも、楽しかったね」
みのりが優しく笑う。
「うん。次は本当に、二人だけで行こうか」
ヒロ室、静止。
美月が叫ぶ。
「はいはいはいはいはい!!」
彩香が追撃。
「もう公式でええやろ!」
グレースフォース。
知性派、清楚、上品。
そして――
模擬でも本気になる、危険な百合ユニット。
なお次号では、特集第二弾。
《遠距離カップルの休日密着》
ヒロ室は今日も、平和である。




