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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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535/694

知性は止められない!グレースフォース、フロント地獄の一週間

新橋ヒロ室に、異様な静寂が訪れていた。


原因はただ一つ。

館山みのりと杉山ひかり――通称グレースフォースが、インターン生としてフロント業務に投入されたからである。


「本日より一週間、フロント実務研修を行います」


甲斐の疾風・小宮山琴音が腕を組む。

隣には元大物代議士秘書の安岡真帆。


「戦えるだけじゃダメよ。裏が回って初めて戦隊ヒロインは成立するの」


ひかりは静かに頷き、穏やかな駿河弁で答える。


「承知しました。実務から学ばせていただきます」


みのりもメガネを押し上げる。


「千葉の叡智、発揮します」


琴音がにやり。


「期待してるじゃんけ」


――そして三日後。


電話応対、資料作成、イベント行程表の再構成、スポンサー向け報告書の下書き。

二人は驚異的な速度でこなしていった。


「この文言、法的に曖昧です。修正しますね」


「こちらのデータ、グラフ化した方が一目で分かります」


テキパキ。

無駄がない。

しかも笑顔。


真帆が小声で琴音に言う。


「あの二人、即戦力どころか戦力よ」


琴音も小声で返す。


「遥室長がもう二人いるみてえだに」


フロント陣の評価は上々。


――だが。


パーティションの向こう側。


「揖保乃糸の方が絶対うまい!」


「そうめんは細さが命や!揖保乃糸もそうめんやろが!」


美月と彩香が本気で怒鳴り合っていた。


テーマは“揖保乃糸とそうめん、どちらが美味いか”。


「細さが違うねん!」


「いやだから揖保乃糸もそうめんや!」


「ちゃう!」


「ちゃうくない!」


みのりとひかり、無言。


みのりがそっと検索する。


「……揖保乃糸は兵庫県産のそうめんですね」


ひかりが静かに頷く。


「どちらもそうめんです」


二人は顔を見合わせる。


「……」


「……」


言葉が出ない。


その横で琴音がぼそり。


「ヒロ室はな、こういう場所じゃんけ」


みのりが真顔で尋ねる。


「これは……通常業務ですか?」


「通常運転だに」


彩香が振り向く。


「みのり!どっちや!」


みのりは冷静に答える。


「どちらも美味しいです」


「ずるい答えや!」


ひかりも穏やかに言う。


「争うほどの差はありません」


「裏切りや!」


美月、机を叩く。


琴音が立ち上がる。


「はいはい、揖保乃糸もそうめんもヒロ室の経費じゃねえから静かにしろし」


そこだけ現実。


みのりは深く息を吸う。


「……フロントの仕事は、理性を保つことも含まれるのですね」


真帆が笑う。


「そう。どんなカオスでも顔色を変えない。それがプロよ」


午後。


各省庁合同イベントの調整資料を二人が仕上げる。


無駄がなく、簡潔で、美しい。


琴音がページをめくる。


「完璧じゃんけ」


真帆も頷く。


「フロント修行、合格ね」


その瞬間。


「コピー機止まった!」


「カレーこぼした!」


「誰や電源抜いたん!」


阿鼻叫喚。


みのりとひかり、同時に立ち上がる。


「私が対応します」


「こちらは私が」


冷静。迅速。的確。


十分後、騒動は鎮圧。


琴音が腕を組む。


「……百合コンビ、恐るべしじゃんけ」


ひかりが微笑む。


「実務は学ぶことが多いです」


みのりも頷く。


「戦うだけでは国は動きませんね」


パーティションの向こうでは、美月がまだぶつぶつ言っている。


「でも揖保乃糸の方が高級やろ……」


彩香も負けていない。


「ブランドや!」


みのりとひかり、また無言。


その視線の先にあるのは、誇りでも怒りでもなく、純粋な呆れ。


しかし次の瞬間、二人は笑う。


「……ヒロ室らしいですね」


「ええ」


琴音が満足げに頷く。


「理知も現場も、両方できて一人前じゃんけ」


真帆が静かに締める。


「グレースフォース、フロント適性あり。将来有望」


こうして一週間の修行は終わった。


理知的で優秀。

しかもカオス耐性あり。


ヒロ室は今日も騒がしい。

しかしその中心には、静かに仕事を片付ける百合コンビの姿があった。


揖保乃糸とそうめんの違いを知らない戦友を横目に、

グレースフォースは一段、階段を上ったのである。


知性は止められない。

だがヒロ室の騒音も止まらない。

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