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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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533/695

静と疾の赤ペン大戦争!―駿河の良心、甲斐の疾風に削られる―

新橋ヒロ室、会議室A。

各省庁合同イベントの最終打ち合わせを翌日に控え、空気は妙にピリついていた。理由は一つ。杉山ひかり作成の“完璧すぎる”公式スピーチ原稿である。


「今回のテーマは“地域共創型未来ビジョンの具現化”ですので、論理の整合性と情緒のバランスを大切にしました」


ひかりは、いつもの穏やかな駿河弁で、しかし胸を張って原稿を差し出した。A4用紙、全12枚。ホチキス留め済み。フォントは明朝。余白も美しい。


その向かいに座るのは、甲斐の疾風・小宮山琴音。

ヒロ室の庶務を一手に引き受け、予算ゼロ円でもイベントを成立させる女である。


琴音は黙って原稿をめくる。

1枚、2枚、3枚……。


「……長いじゃんけ」


静かな一言だった。


「えっ」


ひかりの笑顔が一瞬固まる。


「これ、現場で読むの何分かかるけ?」


「ええと……約九分三十秒です」


「イベント全体の持ち時間は?」


「七分です」


ひかり、沈黙。


琴音は赤ペンを取り出した。

その動きに迷いはない。


シュッ。

バッサリ。


「この“歴史的意義の再定義”いらねえけ」


「えっ、そこは今回の核心で――」


「核心は三行で言えるけ。聞いてる人は立ちっぱなしだに」


シュッシュッ。

さらに削る。


「この比喩も綺麗だけど、現場でマイク止まったら全部飛ぶけ」


「マイク、止まる想定なんですか?」


「止まる。絶対止まる」


なぜか断言。


ひかりは動揺しながらも食い下がる。


「でも、言葉の品格は守りたいんです。戦隊ヒロインとしての矜持が――」


琴音は顔を上げる。


「品格はな、言葉の量じゃねえけ。伝わるかどうかじゃんけ」


その瞬間、パーティションの向こうから美月の声。


「カレーは中辛や言うとるやろが!」


「甘口や!子どもも来るんやぞ!」


彩香の播州弁が炸裂。


隣はいつもの動物園状態。

しかしこちらは赤ペン戦争。


ひかりはぐっと唇を結び、原稿を見つめた。


「……では、核心部分を三分に再構成します」


「それでいいじゃんけ」


ひかりはその場で修正を始める。

静かに、しかし速い。頭脳明晰の本領発揮である。


十五分後。


A4三枚に圧縮。


ひかりが読み上げる。


無駄がない。

しかし温度は失われていない。


琴音が腕を組む。


「……いいじゃんけ」


ひかりがほっと息をつく。


「削られて、むしろ芯が見えました」


「理想はあっていいけ。だけどな、現場で通らなきゃ意味ねえ」


そこへ真帆が顔を出す。


「どう?静甲コンビ」


ひかりが答える。


「とても勉強になります」


琴音が肩をすくめる。


「こっちもだに。ひかりの文章、きれいすぎて削るの怖かったけ」


真帆がにやり。


「いいわね。理想と現実の両輪。ヒロ室にもう一人遥室長が増えたみたい」


パーティションの向こうから麗奈の悲鳴。


「ちょっと!新機材触るなって書いてあったでしょ!」


ガタン。


コピー機が唸る。


琴音が立ち上がる。


「行ってくるじゃんけ」


ひかりも立ち上がる。


「私もサポートします」


二人が並んで出ていく。


真帆は腕を組み、しみじみと呟いた。


「静岡と山梨、富士山で揉めてる場合じゃないわね。静甲コンビ、なかなか良いかも」


その夜。


本番のイベントで、ひかりは三分きっかりでスピーチを終えた。

簡潔で、しかし温かい。


観客の拍手は想像以上に大きい。


袖で見ていた琴音が小さく頷く。


「伝わったじゃんけ」


ひかりが笑う。


「甲斐の疾風のおかげです」


「駿河の良心のおかげじゃんけ」


隣では美月が呟く。


「なんやあの二人、かっこええやん」


彩香も腕を組む。


「なんか腹立つくらいまとまっとるな」


真帆は静かに拍手した。


ヒロ室は今日も騒がしい。

だが、その中心には静かな知性と、疾い実務力が並び立っている。


理想を削り、現実を磨き、言葉を届ける。


静と疾。

赤ペン一本で国もイベントも動かす二人。


静甲コンビ、ここに爆誕。

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