予算はないが、知恵はある!―ヒロ室ゼロ円革命とポイントカード外交の奇跡―
新橋ヒロ室に、ある日とんでもない案件が舞い込んだ。
「各省庁合同・地域活性スーパーイベント」。
聞くだけで胃が痛くなる案件である。
防災、観光、教育、農業、産業振興――霞ヶ関の主だった省庁が名を連ねる国家規模イベント。
当然、規模はでかい。
当然、要求も多い。
そして当然のように――
「予算は厳しいですね」
と全省庁が口を揃えた。
「厳しいってなんやねん!国家イベントやろがい!」
美月が机を叩く。
だが、静かに電卓を弾いている人物がいた。泉州の経理担当、谷口佳乃、通称けちのんである。
「戦隊ヒロインプロジェクトは国民の皆さまの血税で運営していますさかい。無駄遣いはでけへんのです」
冷酷なほど真顔。
しかし問題はそこではない。
実は――
「……一番ケチってるの、うちやないか?」
彩香が資料を覗き込む。
そう。
各省庁も渋いが、ヒロ室の内部予算はもっと渋い。
というより、ほぼない。
・コピー用紙は裏面再利用
・ペットボトルは自宅から持参
・イベント横断幕は去年のを裏返して再印刷
・会議のお茶は“共有麦茶ポット”
美月が絶句する。
「うち、戦隊ヒロインやんな?ボランティア団体ちゃうよな?」
その隣で甲斐の疾風・小宮山琴音が、まるで武田信玄の軍配のごとく資料を捌く。
「戦隊ヒロインプロジェクトは金はねえけど、夢はあるじゃんけ。いいじゃねえけ。」
甲州弁まじりで、なぜか爽やかに言い切った。
説得力はゼロだが、勢いはある。
そこへ現れたのが永田町担当・安岡真帆さん。
元大物代議士秘書。
百人力のフロント。
「予算がないなら、動かしましょう。お金じゃなくて、仕組みを」
そう言って取り出したのは、なぜか分厚いポイントカードの束だった。
「……なんですかそれ?」
琴音が目を丸くする。
「スポンサー企業の“社会貢献ポイント制度”。自治体の地域振興ポイント。省庁の広報連携枠。全部横串で通します」
要するに、現金は出ないが“評価ポイント”や“名義協力”を積み上げることで、実質的に規模を拡張する作戦である。
美月がぽかんとする。
「それ、合法なん?」
「もちろん。合法の範囲で最大活用です」
真帆さんは微笑む。
永田町で鍛えられた笑顔である。
琴音は即座に霞ヶ関側へ連絡。
「共催扱いにすれば予算振替できますよね?」
省庁担当が一瞬黙る。
「……小宮山さん、さすがです」
一方ヒロ室では、さらに涙ぐましい節約が進む。
・ステージ装飾はリースではなく倉庫在庫再利用
・ヒロイン控室は“間仕切り段ボール仕様”
・ケータリングは地元商店街の協賛
美月が叫ぶ。
「うちら、国家イベントやで!?おにぎり!?」
けちのんが淡々と返す。
「おにぎりは最強です。コスパ、満足度、栄養価、全て優秀」
完全に理詰めである。
当日。
規模は倍。
参加団体も倍。
ステージも二面構成。
来場者数、予想の一・五倍。
なのに――
ヒロ室の純支出は、前年より削減。
イベントは大成功。
閉会後、波田顧問が腕を組んで言った。
「政治ってのはな、知恵比べなんだよ」
真帆さんは軽く会釈。
琴音はコピー機の電源を切りながらうなずく。
美月が小声で呟いた。
「うち、なんか国家規模の節約合戦に巻き込まれてへん?」
彩香が笑う。
「まあええやん。赤字ちゃうんやろ?」
琴音が爽やかにまとめる。
「金はねえけど、夢はあるじゃんけ」
美月が即座に突っ込む。
「夢だけではステージには立てへん!」
ヒロ室は今日も騒がしい。
だが確かなことが一つある。
ゼロ円でも、国は動く。
動かしているのは――
ポイントカードと、知恵と、そして少しの根性だった。




