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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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526/698

ヒロインなのに完全に総務部長!?真帆さん、ステージで“出演者”を忘れる

最近の戦隊ヒロインプロジェクトにおいて、最も多忙な人物は誰か。


答えは即答だ。


安岡真帆。


元・与党超大物代議士秘書。

現在はフロント兼ヒロイン。

調整力は百人力、現場に立てば落ち着いた口調で完璧なMC。

政治、スポンサー、自治体、ヒロイン管理、戦闘訓練、予算資料。

やっていない仕事を探すほうが難しい。


ヒロ室ではもはや通称は「真帆さん」。


年長者であり、経験も桁違い。

美月も彩香も、どれだけ勢いがあってもそこだけはわきまえている。


ある日、全国ネットの大型メディアが密着取材に来ることになった。

場所は都内の大規模イベント会場。観客数千人。


舞台袖で真帆さんは腕を組み、イヤモニ越しにスタッフへ指示を飛ばしている。


「音響、BGM三十秒遅らせて。スポンサー紹介は順番変更。テロップ誤字、すぐ修正」


完全にフロントモード。


美月が横から小声で言う。


「真帆さん、今日はステージ立つ側やで?」


真帆さん、視線を資料から上げない。


「ええ、もちろん進行は把握しています」


彩香が眉をひそめる。


「進行ちゃいます。出演者です」


一瞬の沈黙。


みのりがタブレットを差し出す。


「出演者一覧、一番上に“安岡真帆”と書いてあります」


真帆さん、固まる。


「……あ」


会場アナウンスが響く。


「続いて登場するのは――」


スタッフが焦る。


「真帆さん、スタンバイお願いします!」


そのとき真帆さんはまだ完全に“総務部長の顔”をしていた。


スーツの裾を直し、腕時計を確認し、イヤモニを調整。


ヒロインの自覚ゼロ。


美月が肩を震わせる。


「ヒロインなのに、完全に現場責任者や」


彩香が吹き出す。


「カメラ来とるのに資料持ったまま出る気やったやろ」


真帆さんは小さく息を吐き、資料をスタッフに預ける。


「……ありがとう。危なかったわ」


ステージに出た瞬間、歓声が上がる。


落ち着いた笑顔。

堂々とした立ち姿。

コメントも的確。


だが、美月がマイクを握る。


「皆さん! うちの真帆さん、さっきまで自分が出演者やって忘れてました!」


会場爆笑。


真帆さんのこめかみがぴくり。


「忘れていたわけではありません。確認していただけです」


彩香が追い打ち。


「確認言うて五分前まで指示出しとったやないですか」


みのりが真顔で分析。


「自己役割の優先順位がフロント寄りに偏っていましたね」


小春がDJ口調で。


「ヒロインより会議室が似合う女~!」


観客は大喜び。


しかしイベント終了後、楽屋で真帆さんは椅子に座ったまま、珍しく静かだった。


乙実がそっとお茶を差し出す。


「真帆さん、今日ずっと走ってたべ」


「大丈夫よ」


即答。しかし目の奥にわずかな疲労。


美月が言う。


「真帆さん、うちら守るのも大事やけど、自分もちゃんとヒロインやで?」


彩香も頷く。


「真帆さんが横に立っとると、安心するんですわ」


みのりが穏やかに。


「調整役である前に、仲間です」


真帆さんは少しだけ視線を落とす。


「……ヒロインであることを後回しにしていたかもしれないわね」


乙実がぽつり。


「忙しいと、自分の肩書き増えすぎて分からなくなるもんだべ」


全員、吹き出す。


「肩書き増えすぎ問題!」


その夜、真帆さんは資料の山を前に、ふと立ち止まる。


スーツのポケットに入ったヒロイン用の名札。


指でなぞる。


フロント。

秘書。

調整役。

そしてヒロイン。


どれも本物。


翌日の現場。


舞台袖で美月が言う。


「真帆さん、今日は出演者やで?」


真帆さんは微笑む。


「今日は最初から分かってるわ」


彩香がニヤリ。


「ほんまですかいな」


真帆さん、資料を閉じる。


「今日は“真帆さん”じゃなく、ヒロインの安岡真帆として立つわ」


会場へ歩き出すその背中は、秘書でも総務部長でもない。


ちゃんとヒロインだった。


ただし、イヤモニからは小声でスタッフに指示が飛んでいる。


完全には抜けない。


それもまた真帆さんらしい。


忙しすぎて役割を忘れかけても、

結局どれも手放さない。


それが戦隊ヒロインプロジェクト最強の二刀流、

みんなの“真帆さん”だった。

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