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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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52/444

『川崎の風は少しだけ逆風 ― 水無瀬澪、市民の心つかめず』 ――哀愁と笑いのサックスブルー篇――

作者は川崎市出身です。


まぁ知らんけど。

川崎市役所は本気だった。

市を挙げて送り込んだ“代表ヒロイン”なのだから当然だ。

ところが当の本人・水無瀬澪は、期待を背負わされている自覚がまるでない。


任務前は「まぁ川崎だし」と肩を回し、

イベント前は「知らんけど」とつぶやきながら欠伸。

本人の胸の奥にはちゃんとした闘志があるのだが、

外からは 燃えてる気配がゼロ。

その結果、市民人気は妙に伸び悩んでいた。


そこで市役所が動いた。


「水無瀬澪さんを、市民にもっと知ってもらおう!

横断幕だ、横断幕を出そう!!」


典型的な昭和アプローチである。

令和のプロモーション感ゼロ。


そして……

JR川崎駅・東西自由通路に掲げられた横断幕は市民をざわつかせた。


《川崎の守りは 任せて安心☆ 水無瀬澪》

(☆の位置と使い方が昭和)


《立て!若人 水無瀬澪!!》

(若人って久々に聞いた)


《澪ちゃんがんばれ!市民総出で応援中》

(総出……?いつ?)


さらに改装工事中の市役所本庁舎前には極めつけが掲示された。


《川崎躍動の時!

 行け!青き戦士・水無瀬澪!!》


市民の反応は冷たかった。

「なんか……懐かしい字体だね」

「これ、昭和40年代?」

「澪ちゃん可愛いけど、横断幕が昭和の町内会」

「“若人”は攻めすぎ」


市役所が張り切れば張り切るほど、

澪の哀愁が増していく不思議な現象が起こった。


当の本人はと言えば、

横断幕が貼られた駅の自由通路を歩きながら、

無表情でぼそり。


「なんか……目立つな。

まぁ川崎だし。

知らんけど。」


じつは澪、内心ではめっちゃ恥ずかしい。

しかし言い出すのが面倒なので放置している。


他のヒロインたちは微妙な空気を察し、

みのりはそっと肩を叩いた。


「澪ちゃん……これは……がんばって……」

(言葉が見つからない)


麗奈は爆笑を堪えながら囁いた。

「澪って、こういうの似合うよね……ふふっ」


沙羅は完全に火に油を注ぐ。

「おおっ、若人の澪!って書いてある!かっこい〜!」

(悪気なし)


澪はただ一言。


「もう、知らんけど……」


そんな彼女の哀愁と脱力感は、

逆にじわじわ市民の心を掴んでいく気配もある。


横断幕のダサさを笑おうとスマホを向けた市民が、

そのうち“澪の飾らない魅力”を語り始めるまで、

そう時間はかからなかった。

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