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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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516/695

止めに来たのは、庄内弁だった ――川口オート控室・静かな終戦

 川口オートレース場での大型イベントは、

 表向きには大成功で終わった。


 歓声、拍手、写真撮影。

 ステージは派手に締まり、観客は満足顔。

 問題は――その後である。


 控室。


 汗と熱気と、微妙な疲労が混ざった空間で、

 例の音が鳴り始めた。


「ちょっと待てや美月!」

「はぁ!? なんや彩香!」


 はい、始まった。


「立ち位置やで!?

 あんた、毎回一歩前出すぎや言うてるやろ!」


「うっさいわ!

 前出な客見えへんやろがい!」


「見える見えへんの話ちゃうねん!

 段取りの話しとんねん!」


「段取り段取りって、

 播州は細けぇなぁ!!」


 完全に小学生。


 その様子を見ていた麗奈は、

 タオルで汗を拭きながら一言。


「あ~、はいはい。

 また始まった。放っとこ」


 みのりも頷く。


「うん。

 止めると長引くから」


 そして――

 控室の端に鎮座する ドリームトラクター蒼牙2000・改。


「……データ上、

 この二人は放置が最適解です」


 機械にまで見放される二人。


「誰が前出すぎやねん!」

「そっちこそ被せてくるやろが!」

「河内は距離感ゼロか!」

「播州は心狭すぎや!」


 言語だけが、

 どんどん濃くなっていく。


 そのとき。


「……あのぉ」


 控室の空気が、

 一瞬だけ止まった。


 今津乙実だった。


 声は小さい。

 表情は困り顔。

 でも、ちゃんと前に出ている。


「二人とも……

 おらだの集落だど、

 ここまで来る前に

 誰が雪かきすっかで

 三日くらい揉めっけど」


 庄内弁、静かに投下。


「……ん?」

「は?」


 美月と彩香、同時に止まる。


「でもな、

 最終的にやる人は決まってて、

 終わったら

 みんな同じ鍋食うんです」


 誰も頼んでない人生訓。


「今日も……

 二人とも前で頑張ってたっす」

「客、ちゃんと見でた」

「だから……

 立ち位置、一歩くらい

 雪みてぇなもんだと思っても

 ええんでねぇがな」


 控室、沈黙。


「……なんやそれ」

 美月がぼそっと言う。


「意味、よぉ分からんけど……

 なんか腹立たんわ」


「せやな」

 彩香も腕を組む。

「雪の例えは雑やけど」


 その瞬間。


「……はい、解決」


 麗奈が即断。


「今のは乙実の勝ち」


 みのりも笑う。


「新しい緩衝材、誕生だね」


 蒼牙2000・改も、

 低く唸る。


「……

 これまでの調停役:

 綾乃、遥室長。

 新規登録:今津乙実」


 正式採用。


「え!?

 おら、なんもしてねぇけど……」


 乙実、全力で困惑。


「してたしてた」

 美月が肩を叩く。

「河内弁でも播州弁でもなく、

 庄内弁で殴られたわ」


「うちも」

 彩香が頷く。

「妙に効いた」


 こうして。


 川口オートの控室で、

 新たな役職が爆誕した。


 アクの強いヒロイン同士の緩衝材。


 前に出ない。

 声も張らない。

 でも、場が荒れたら――

 一番効く。


 今津乙実。


 いぶし銀は、

 今日も静かに、

 衝突を防いでいた。

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