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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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511/694

光と炎と庄内弁 ― 狭山で始まった、地味ヒロインの革命

埼玉県狭山市。

お茶の栽培で全国的に知られつつ、実は大手製菓メーカーの巨大食品工場が立ち並ぶ、れっきとした埼玉屈指の工業都市である。

駅前はほどよく賑わい、郊外に出れば茶畑が広がるという、都会と田舎のバランスが妙に取れた街だ。


そんな狭山市のイベント広場で、この日、戦隊ヒロインプロジェクトのイベントが開催されていた。


ステージ上では、

照明、スモーク、火花、SE――

完全に夜のクラブ仕様の演出が炸裂している。


その中心に立つのが、

ノリにノッたMC・月島小春だった。


「いくよ狭山ァーーー!!」


観客がどよめく。


「次は新メンバー!

山形県鶴岡市からやってきた、

素朴で!芯が強くて!

今までにいなかったタイプのヒロイン!!」


小春はDJばりに腕を回し、


「今津乙実の登場だぁ~~☆」


と絶叫した。


音楽が爆音で鳴り、

火柱がドン!

照明がバチバチに明滅し、

完全に「これから最強アタッカー出ます」的な雰囲気。


そして――

その真ん中から現れたのが、


昭和の空気をそのまま持ってきたような、素朴な娘。


姿勢はやや硬く、

表情は真面目そのもの。

派手な演出とは真逆の、

「農協の広報誌に載ってそう」な雰囲気。


観客の頭上に、

見えない「?」が浮かんだ。


――あれ?


ギャップが、ひどい。


乙実はマイクを受け取り、

一度、小さく深呼吸をした。


「……は、はじめまして。

山形県鶴岡市がら来ました、

今津乙実です」


その瞬間、

庄内弁が一切の遠慮なく飛び出した。


そして乙実、

なぜかスイッチを盛大に入れ間違える。


「あの……

鶴岡市はですね、

お米だけでねぐて、日本酒も美味しくて……」


会場がざわつく。


「野菜も魚も空気も美味しいんです。

温泉もありますし……」


完全に

市の観光振興課の担当者である。


「雪は多いんですけど、

人は我慢強くて……」


どこからか、クスッという笑い声。


失笑。

だが、悪意はない。


MC席の小春は

「お、おう……?」

という顔をしているが、止めない。


乙実は最後に、真顔で言った。


「ぜひ皆さん、

一回でいいがら、鶴岡さ来てみでけろ」


会場に、

拍手が――

思った以上に、起きた。


ドッと笑いが混じった拍手。

だが、どこか温かい。


イベント終了後。

控室で乙実は肩を落としていた。


「……ちょっと、

上手くいがながったなぁ……」


そこへ声をかけたのが、

狭山市のお隣・飯能市出身の宮沢萌音だった。


「大丈夫ですよ」


柔らかい笑顔で、萌音は言う。


「この辺の人たち、

シャイだから態度には出さないですけど……

拍手、すごく温かかったです」


乙実は驚いて顔を上げる。


「ほんとに……?」


「ええ。

ちゃんと受け入れてもらえてます」


その言葉に、乙実は少しだけ笑った。


そこへ小春と麗奈が乱入する。


「乙実ちゃん、最高だったよ!」

「今までにないタイプ!貴重すぎ!」


「このまま行こう、このまま!」

「盛らない路線、唯一無二!」


乙実は照れながら、庄内弁で答える。


「……んだがぁ?

そ、そう言ってもらえるなら……

このままで、やってみっが」


光と炎に包まれた狭山のステージで、

ひとりの地味なヒロインが、

確かに“刺さる存在”として誕生した瞬間だった。


派手じゃない。

上手くもない。

でも、嘘がない。


今津乙実の戦隊ヒロイン人生は、

こうして、静かに――

しかし確実に、始まった。

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