『静かなる蒼と、だいたい川崎の話』 ――水無瀬澪・戦隊ヒロイン加入秘話――
作者は川崎市出身です。
川崎市には特別な思い入れがあったりなかったりします。
水無瀬澪は、生粋の川崎っ子だ。
と言っても、本人は「まぁ川崎だし」としか言わない。
たまに「知らんけど」が語尾につく。
川崎愛があるのかないのか、外から見ると判断不能だが、澪の中では“緩く燃えてる”らしい。
澪が戦隊ヒロインになった理由は、歴代ヒロインの中でもとびきり雑だ。
なんと 父の知人が川崎市の助役で、「川崎市代表として送り込もう」という謎のゴリ押しが入り、気づいたら“サックスブルーの制服”が家に届いていた。
澪の第一声はこれだった。
「……まぁ、着るけど。知らんけど。」
その制服――川崎市営バスと川崎フロンターレのイメージカラーをミックスした鮮やかなサックスブルー。
しかも左袖には 川崎市市章+『川崎市』の漢字刺繍入り。
完全に“行政案件”である。
誰がどう見ても、役所から送り込まれた感がすごい。
紹介の日。
月島小春、館山みのり、大宮麗奈の前に立った澪は、気だるく一礼して言った。
「水無瀬澪。川崎代表……らしい。まぁ川崎だし。よろしゅう。知らんけど。」
麗奈が「えっ、やる気ある?」と訊くと、
澪はまぶた半開きでこう返す。
「指示は守るよ。言われたとおり動くのは嫌いじゃないし。考えるのめんどいし。」
実際、戦闘訓練でもその姿勢はブレない。
パンチをしろと言われればパンチ。
蹴りと言われれば蹴り。
「もっと熱く!」と教官に言われると、
「え、熱量って増やせるの?知らんけど」と返す。
そのくせ、自分の制服に関しては妙にこだわりがある。
みのりが「左袖の市章、いいね」と褒めると、
澪は少し誇らしげに言った。
「まぁ・・・・市章かわいいし。ゴミ収集車も同じ色だし。」
麗奈が「ゴミ収集車を引き合いに出すのやめなさいよ」と突っ込めば、
澪は即答する。
「いやでもホントに同じ色なんだよね。知らんけど。」
そんな調子で、やる気があるのか無いのか全く読めない澪。
だが一度任務が始まると、指示への忠実度は戦隊随一。
なぜなら、
「考えると疲れるし、指示通りやっといた方が楽だし。」
という圧倒的省エネ精神。
それでも澪は不思議と憎めない。
その投げやりに見える言葉の奥には、
“文句は言うけど、川崎は嫌いじゃない”という緩い誇りが潜んでいる。
戦隊ヒロインたちはそんな澪をこう呼ぶようになった。
静かなる蒼、水無瀬澪。
動機はどうあれ、働きは一流。
ただしコメントは二流。
知らんけど。




