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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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504/694

白に閉ざされた庄内――今津乙実、名もなき現場から

新潟県下越から山形県庄内にかけて、線状降水帯が居座った。

雪は容赦なく降り続き、数日で「十数年に一度」が「数十年に一度」に格上げされる勢いだった。


鶴岡市の山間部。

十数世帯しかない限界集落は、雪崩と吹き溜まりで完全に孤立。

道は消え、除雪車も来られず、「ここに人が住んでいる」という事実そのものが、地図から消えかけていた。


そこへ入ったのが、戦隊ヒロインプロジェクトへの災害救援要請だった。


最初に現れたのは――

低く唸るエンジン音と共に雪原を割って進む、ドリームトラクター・蒼牙2000・改。


「おぉ……なんだあれ……」

「戦車か?」


集落の人々がざわつく中、コクピット横から飛び降りたのが唯奈だった。


「だいじょぶだっぺ!

 雪なんざ、どかしてやりゃ道になるんだっぺよ!」


ドギツイ茨城弁が、真っ白な世界に妙に響く。

その声だけで、なぜか場の緊張が一段下がった。


蒼牙2000・改は即座に除雪モードへ移行。

固く締まった雪を削り、崩れやすい箇所はアームで慎重に排除する。


「おい蒼牙、そっちは下スカスカだっぺ!

 そこ踏んだらズボッていくぞ!」


《了解。路面支持率、再計算します》


人間の勘と、機械の精度。

その組み合わせで、雪に閉ざされた道は少しずつ姿を取り戻していった。


やがて、雪の向こうから現れたのは

伊吹真白が運転する、カンガルーマークの大型トラック。


「物資来たぞー!」

「生き返ったぁ……」


その後ろから、慰問活動のヒロインたちが到着する。

詩織、美月、みのり、小春、麗奈。


歌を歌い、声をかけ、手を握る。

それだけで、集落の空気は確実に明るくなっていった。


――だが、全員が素直に喜べたわけではない。


疲れ切った一部の罹災者が、吐き出すように言った。


「ヒーローごっこして、何になるんだ」

「写真撮りに来ただけだべ?」


その言葉を真正面から受けてしまった詩織は、固まった。

真面目すぎる彼女には、少し強すぎる言葉だった。


そこへ、ひとりの女性が前に出た。


厚手のコートに長靴。

地味だが、立ち姿が不思議と頼もしい。


今津乙実だった。


「……すみません」

静かだが、はっきりした声。


「この人たち、悪気で言ってるんじゃないんです」

「不安で、余裕なくなってるだけで……私も同じですから」


その言葉に、罹災者も詩織も、同時に息をついた。


乙実は続けた。


「でも、この人たちが来てくれてなかったら、

 もっと怖かったのは事実です」


詩織は、はっきりとうなずいた。


その後、乙実は自然にヒロインたちの動きに加わった。

どの家に先に行くべきか。

誰が今、一番きついか。


罹災者だからこそ分かる感覚で、現場をつないでいく。


唯奈がそれを見て、ニヤッとする。


「おめぇ、気ぃ利くなぁ。

 こーいうの、机の上じゃ学べねぇんだっぺ」


《彼女の判断は、非常に合理的です》

蒼牙2000・改も淡々と評価する。


同行していた真帆と隼人補佐官は顔を見合わせた。


やがて乙実は、少し遠慮がちに言った。


「……邪魔じゃなければ」

「他の孤立した集落にも、同行させてもらえませんか」


「罹災者の立場で、伝えられることがあると思うんです」


隼人補佐官は即答だった。


「ぜひ、お願いします」


真帆も短く頷く。


「……現場を知ってる人は貴重です」


こうして、

庄内の雪の中で――


蒼牙2000・改が道を拓き、

唯奈が声で場を温め、

ヒロインたちが希望を届け、

そして今津乙実が、人と人をつないだ。


名乗りも、変身もない。

だがこの日、確かに。


一人のヒロインが、現場で生まれていた。

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