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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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502/695

ビーチ隼人、水に落ちる――八戸仕込みの透明感

蛯沢紗耶は、青森県八戸市出身である。


八戸市といえば、太平洋に面した港町。

冬は寒いが雪は比較的少なく、潮の香りとウミネコと、どこか無骨で実直な空気が漂う街だ。

派手さはないが、魚は旨い、水は冷たく澄んでいる。

そして人間は、基本的に我慢強い。


「八戸の人って、あんまり自分のこと語らないよね」


そう言ったのは美月だったが、紗耶はただ小さく笑っただけだった。


そんな紗耶の父は、かつて八戸市水道局勤務の公務員だった。

真面目。堅実。時間厳守。

絵に描いたような「模範的地方公務員」。


――だった。


「商品先物取引に手ぇ出して、全部溶かして消えた」


美月が要約すると、話は一行で終わる。

だが現実は当然そんなに軽くない。


ある日突然、父は姿を消し、

残ったのは多額の借金と、

「なんで?」という疑問だけ。


遥室長はこの話を聞いた時、静かに眉をひそめた。


「水道局勤務で、先物……?」


「逆に分からんから手ぇ出したんちゃいます?」

彩香が軽く言うが、全員それ以上深掘りしなかった。


当の紗耶はというと、妙にあっさりしている。


「父は……水の人だったんだと思います」


「水の人?」

ビーチ隼人補佐官が反応した。


「はい。

水道水の水質とか、配管とか、異常なほど気にする人で。

家でも“水は命だ”って」


その瞬間、

ビーチ隼人補佐官の脳内で、何かがカチッとはまった。


(だからか……)


紗耶の肌は、とにかく綺麗だった。

北国出身の色白というだけでは説明できない、

透明感というか、

「水そのもの」みたいな感じ。


「……あの」


隼人補佐官は真顔で聞いた。


「紗耶さん、普段どんな水、飲んでます?」


一同がずっこけた。


「そこ!?」

美月が即ツッコむ。


だが紗耶は真面目に答える。


「基本は水道水です。

でも、浄水器は三段階。

あと、お風呂も必ず湯張り前に一度流します」


「ほう……」

隼人補佐官の目が輝いた。


「シャワーは?」

「最初は必ず冷水で配管内を流します」


その瞬間、

ビーチ隼人補佐官は完全に落ちた。


「……合理的だ」

「いや、そこに惚れる?」

小春が呆れる。


だが隼人補佐官は止まらない。


「つまり八戸の水と、水道局の英才教育が、この肌を――」


「補佐官」

紗耶が穏やかに遮る。


「それ以上言うと、怒られますよ」


振り返ると、

遥室長が静かな笑顔で立っていた。


「隼人くん」

「水フェチだったっけ?」


「ち、違います!」


即答だが遅い。


ヒロ室には一瞬で理解が広がった。


「あー……」

「そういうことね」

「ビーチ補佐官、結局そこか」


蒼牙2000・改まで追い打ちをかける。


「解析完了。

ビーチさんは“水属性ヒロイン”に弱いと判断」


「余計な分析するな!」


その日の終わり、

ヒロ室フロントでは話題がこうまとまった。


・八戸の水は強い

・水道局は侮れない

・ビーチ隼人は、水で落ちる


紗耶は少し困ったように笑った。


「父は……いなくなりましたけど」


そして、はっきりと言う。


「水だけは、裏切らなかったです」


その一言に、

笑っていた全員が一瞬だけ黙った。


そして次の瞬間、

美月が言った。


「……せやけどビーチ補佐官、

これ以上メロメロになったら、

水道料金値上げするで?」


ヒロ室は爆笑に包まれた。


八戸の水は冷たい。

だが、

ビーチ隼人補佐官の心は、今日も見事にぬるま湯だった。

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