ハマを名乗る女、畑とマムシに囲まれて
横浜の新たな戦隊ヒロイン・南部沙羅(22)。
その第一声は堂々たる宣言だった。
「わたくし? ハマのスターフォールよ。
ヨコハマの風と海をまとって生まれた戦士だから。」
月島小春と館山みのり、そして大宮麗奈。
三人はそろって「へぇ~」と微笑んだが、心の声は一致していた。
(……この人、絶対なんか盛ってる。)
遥広報官も苦笑いで紹介を続ける。
「沙羅さんはですね、横浜市……の、えー……その……“端っこ”の方にお住まいでして」
沙羅がすかさず食い気味に訂正する。
「“サバーブス”って言って?
横浜のベッドタウンでありながら、
自然の恵みと都会性が調和したエリアなの」
しかし麗奈がスマホで地図を見て、冷静に一言。
「……これ、ほぼ隣の市じゃない?
ていうか畑の方が多くない?」
みのりも畳みかける。
「ここ“横浜駅から私鉄で30分+バス20分”って書いてあるんだけど……
沙羅さん、コンビニまで自転車で10分って本当?」
沙羅は胸を張った。
「違うわよっ! 8分よ!」
(そこ短くしても都会にはならない)
一同の総ツッコミが脳内で鳴り響く。
さらに遥広報官が追い打ちをかける。
「“マムシ注意”の看板が近所にあるって聞きましたけど?」
沙羅は即答した。
「それは……風光明媚な土地柄だからよっ!」
麗奈が吹き出した。
「ハマにマムシって出るの?」
「出るわよ! 横浜の自然は深いの!
ほら、港町って奥が深いじゃない?」
(マムシの深さじゃない)
みのりは温厚そうな顔をしながら冷静に指摘した。
「ちなみに、沙羅さん英語得意って聞きましたけど……TOEIC650点?」
「あれは……あの……その……
わたし、発音はネイティブ級だから!」
麗奈がじっと見つめる。
「“ネイティブ級”で『サブウェイ』を“サブエイ”って言ってたよね?」
沙羅は真っ赤になりながら叫んだ。
「……イントネーションが複雑なのよ!」
さらに「武術の達人」を自称する件にも話題が及ぶ。
小春が優しく聞く。
「沙羅ちゃんって格闘技強いの?」
「もちろん! ハマの夜風のようにしなやかで――」
澪が無表情でボソッと呟く。
「ミット打ち、全然当たってなかったけど……」
(致命的すぎる)
沙羅は背筋を伸ばし、悔し涙すらキラリと光らせながら言い放つ。
「わたしは! ハマのプリンセスなの!
ハマのスターフォールなの!
都会の風を吸って育ったのよ!」
その瞬間――
みのりがボソッと落としたひと言が会場を凍らせた。
「……“都会の風”って、
これ、畑の風じゃない?」
沙羅の怒りが爆発した。
「なんでよおおおおおお!!
ハマなの! ヨコハマなの!!
うちは“港の都”の民なのぉ!!」
麗奈が肩を叩いて慰める。
「大丈夫……“気持ちは”横浜だよ……」
遥広報官も優しい笑顔で言った。
「まあ“そういうこと”にしとくで……」
こうして、
実態は郊外の田園住まい、
心だけ大都会・横浜のプリンセス、
南部沙羅は今日も自信満々に名乗る。
『YOKOHAMA STARFALL』
――ただし、最寄りの私鉄系スーパーは19時半閉店である。




