キャンパスは今日も平和(たぶん)
赤嶺美月、20歳。
東大阪市在住。地元の有名私立大学・経済学部に在籍中。チアリーディングサークル所属。
そしてもうひとつの顔——国家プロジェクト認定・戦隊ヒロイン。
「……なぁ、ゼミ出る前にちょっと聞いてんけど、ウチ昨日のニュースにまた映ってたんやって? “停止線越えた原付に、愛のドロップキック”って見出しついてたらしいで……」
「そらもう、止まってへんもんは止めるのがヒロインやろ?」
「赤嶺さん、それ犯罪ぎりぎりです……」
そんな会話をしつつ、今日も美月は、大学の正門をくぐる。
戦うヒロインとは思えないほど童顔で愛嬌たっぷりな美月。
だが一度スイッチが入ると、敵も味方も凍りつく怒涛の河内弁が炸裂する。
そんな彼女のことを、学内では誰もが知っている。
講義では真面目。小テストはほぼ満点。
ゼミでは経済政策を論理的に解説し、教授も唸る。
空きコマではサークル仲間とランチし、バク転の練習に汗を流す。
夜になれば、チアサークルの仲間とコンパで盛り上がり……と、まさにフル稼働の毎日。
「乾杯〜! ……で、美月ちゃん、次の戦隊の任務いつなん?」
「来週な、なんか潜入調査で、またナース服で老舗病院入れ言われてるねん。うち、もう院内で“白衣の狂犬”って噂になっとるらしいわ」
「ヒロイン像、どこ行った!?」
コンパ会場は爆笑の渦に包まれる。
だが、いざというときの美月の目は鋭い。
「守るべきものがあるから、戦えるんや」
——それが、美月のポリシー。
「今日も授業出て、サークルやって、鍋つついて、明日も戦隊や。なかなかええ毎日やろ?」
そんなふうに言って、照れくさそうに笑う彼女を、誰もが好きになる。
赤嶺美月——
普通の大学生でありながら、非日常を背負って戦う、令和のヒロイン。
彼女の日常は、まだまだ騒がしくて、ちょっぴり眩しい。