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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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498/697

千円で揺れる正義――ヒロ室おやつ戦争・開戦

ヒロ室の休憩スペースが、ここまで甘く、ここまで輝いて見えた日はなかった。


テーブルの上には、

有名洋菓子店のシュークリーム、

限定ロールケーキ、

なぜか一粒ずつ箱に入った高級チョコレート。


「……これ全部、罰金やんな?」


赤嶺美月が腕を組んでうなずく。

「せや。全部“ビーチ補佐官基金”や」


小春がフォークを握りしめる。

「ありがとう……ビーチさん……!」


みのりは理知的に総括した。

「名前を間違えるたびに甘味が増える。合理的ですね」


その瞬間、

当のビーチ隼人補佐官は、部屋の隅で体育座りをしていた。


「俺の尊厳は……どこに行ったんだ……」


■悪魔の会議(おやつ前)


「なぁ、これさ」


美月が声を潜める。


「もっと豪華にできへん?」


「……え?」

「どういう意味?」


彩香がニヤリとする。

「“さゆり”って言わせりゃええんやろ?」


小春が即座に理解した。

「つまり……誘導尋問?」


みのりが頷く。

「心理的トリガーを踏ませる、と」


「それや!」

美月が机を叩く。


こうして、

史上もっともどうでもいい作戦会議が始まった。


■第一日:露骨すぎて失敗


美月が隼人に近づく。


「なぁビーチさん」

「……何だ」


「最近、国分町とか行ってへん?」


「行ってない!」


「ほな、さゆ……」


「言わせるか!!」


即座に回避。


「ちっ……」

「早すぎるわ」


■第二十日:自然な会話を装う作戦


小春が穏やかに話しかける。


「紗耶さんって、青森でしたよね」


「そうだな」


「……“さ”がつく人、多いですよね」


「……」


隼人、無言で後ずさり。


「今の危なかった」

「惜しい!」

「千円逃した!」


■第三十五日:逆襲のビーチ隼人


隼人も、黙ってはいなかった。


「……なぁ」


ヒロイン達を見渡す。


「これ以上罰金増えたら、俺、夜の店に行けなくなる」


「自業自得やろ」

「反省してへんやん」


「だからだ」


隼人は低く宣言した。


「今日から俺は、完全無言主義で行く」


「は?」


「質問も、指示も、全部ホワイトボードだ」


■地獄の無言週間


ホワイトボードに書かれる指示。


《集合》

《解散》

《各自判断》


「めんどくさっ!」

「逆に疲れる!」


詩織が首を傾げる。

「……お芝居の稽古かな?」


陽菜は感心していた。

「文字きれいですね」


■第六十日:紗耶、困る


紗耶が小さく声をかける。


「あの……補佐官……」


隼人、反射的に答えそうになる。


「……」


全員、息を呑む。


「……だ、大丈夫です」


危機回避。


だがその様子を見た美月が呟く。


「……ちょっと可哀想になってきたな」


■第八十日:ついに事故が起きる


慌ただしい現場。


隼人が反射で叫ぶ。


「さゆりさん、そっちは――」


沈黙。


次の瞬間。


「「「千円ーーー!!!」」」


拍手。


紙袋が増える。


「これで今月のケーキ確定や!」

「ティラミス追加!」


隼人は天を仰いだ。


「……俺は、何と戦ってるんだ……」


■第百日:戦争、自然終結


豪華になりすぎたおやつに、

ついに真帆が一言。


「……糖分、過多」


遥室長も穏やかに言った。


「もう十分かな」


その一言で、戦争は終わった。


ヒロ室に残ったのは、

甘い匂いと、

妙な連帯感と、

財布が軽くなったビーチ隼人だけだった。


紗耶が小さく笑う。


「……ありがとうございました」


隼人は、やっと自然に答えた。


「こちらこそ」


名前は、言わなかった。


それだけで、

この戦争は、意味があった気がした。

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