新メンバー ハマの勘違いプリンセスと川崎の無気力サックスブルー
戦隊ヒロインプロジェクト本部。
昼下がりの会議室には、月島小春・館山みのり・大宮麗奈の三人が集められていた。
「新しい仲間を紹介します」と遥広報官に言われただけで、胸の奥がそわそわしている。
遥広報官が軽く咳ばらいをして、扉に目線を向けた。
「じゃあ――ふたりとも入ってきて」
まず姿を現したのは、
横浜港の潮風をまとったような美人だった。
サングラスを頭に乗せ、髪はゆる巻き、
絵に描いたような都会の“自信満々ビューティー”。
見下すような視線がデフォルトでセットされている。
「横浜代表、南部沙羅です。
まあ、よろしくしてあげてもいいけど?」
その言い方だけで、みのりと麗奈は目を合わせる。
うわ、出たわ……こういうタイプ。
小春は苦笑しながらひじを軽く折る。
「よろしく〜。とりあえず座りな?」
沙羅は“あなたたちの隣に座ってあげる”という空気で腰を下ろした。
続いて静かに、気配もなく入ってきた少女がいる。
髪は肩で結ばれ、制服はきれいに着ているのにどこかやる気が感じられない。
「……川崎市の水無瀬澪です。
あ、別にそんな気合いとかいらないんで……適当にお願いします」
声は小さく落ち着きすぎており、
全体的に川崎の工業地帯みたいに“無風”。
沙羅が横目で澪を見る。
「ねぇあなた、第一印象から気圧低くない?
もっとこう……横浜的なテンションはないわけ?」
澪はまばたき三回だけして答えた。
「横浜って……うち川崎なんで。
テンションとか……あんまり……」
「この子、やる気ゼロ!?"
麗奈がつい素で声を出す。
みのりは周囲を見ながら控えめに笑う。
「大丈夫ですよ。澪さん、ゆっくり慣れてくださいね。
……川崎市章、かわいいですし」
澪は袖の市章ワンポイントを触って、ぼそっと漏らした。
「え……気づいたの……初めて……」
小春は“これはメンバーの個性が爆発する未来しかない”と悟った。
沙羅は足を組み直しながら澪を見つめ、
澪は澪で沙羅を一瞥して眠そうに瞬きするだけ。
性格も、空気も、テンションも、出身地の空気感も違いすぎる。
遥広報官は静かに締めくくった。
「以上、今日からふたりが新しくチームに加わります。
――個性が強いですけど、きっと良い戦力になりますよ」
その瞬間、小春・みのり・麗奈の三人は心の中で叫んだ。
(“強い”のは個性じゃなくて癖の方だろ……!)
こうして、
横浜の高飛車女王と、川崎の無気力少女のデビューは
静かで派手でカオスな幕開けとなった。




