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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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470/558

シュシュ入れ替え事件簿 ―見抜いたのは人じゃなかった―

迫田澄香と迫田澪香――通称、迫田ツインズ。

 戦隊ヒロインプロジェクト史上、前代未聞の“見分けがつかない問題”を引き起こした空前絶後の美人双子である。


 最高経営会議(※徹マン)という名の無駄に重たい儀式を経て、ついに結論は出た。


 イベント時の識別方法、確定。


 澄香は――

 オレンジのシュシュ。

 宮崎の太陽。

 燦々。

 情熱。


 澪香は――

 スカイブルーのシュシュ。

 南国の空。

 爽快。

 透明感。


「これで完璧や!」

 美月が胸を張る。


「ようやく人間の目でも区別できるな」

 隼人補佐官が深くうなずく。


「もう二度と間違えません」

 藤原詩織も安心した顔だ。


 ――その安心感を、

 双子は一瞬で破壊しに来た。


 イベント当日。

 控室。


「ねえ澪香」

「なに、澄香」


 二人は鏡の前で並び、にこにこしていた。


「……やる?」

「やるよね」

「だよね」


 次の瞬間。

 シュシュ、交換。


 オレンジが澪香へ。

 スカイブルーが澄香へ。


「ふふ」

「えへへ」


 悪意ゼロ。

 善意ゼロ。

 純度100%の悪戯。


 そのまま二人は何食わぬ顔でステージ裏へ向かった。


 結果――

 全滅。


「えっと……どっちが澄香さん?」

 詩織が小声でみのりに聞く。


「……オレンジが澄香、やんな?」

「いや、今日は青が……?」

「昨日はオレンジだった気が……」


 美月が頭を抱える。


「なんでや!決めたやろ!色で!」

「色が嘘ついてるんや!」


 彩香も混乱する。


「二人とも動き一緒すぎやろ……」

「呼吸まで同期してない?」


 迫田ツインズは、

 何事もない顔で立っていた。


「どうかしました?」

「問題ないですよ?」


 この時点で、

 ヒロイン全員の脳内はパニックだった。


 ――ただ一体を除いて。


 ステージ袖に鎮座する、

 ドリームトラクター

「蒼牙2000・改」。


「確認します」

 低く、落ち着いた声が響く。


「オレンジのシュシュを装着している個体は澪香さん。

 スカイブルーのシュシュを装着している個体は澄香さんです」


 空気が凍る。


「……え?」

「今、何て?」

「蒼牙、合ってる?」


「はい。

 心拍の揺らぎ、視線のクセ、立ち位置補正、

 そして“悪戯時に右眉が0.2ミリ上がる癖”を照合しました」


「こわっ」

 みのりが思わず呟く。


 澄香と澪香は、顔を見合わせた。


「……バレた?」

「完全にバレたね」


 二人はそろって蒼牙2000・改の前に立ち、

 ぺこりと頭を下げた。


「すごいです」

「人間より正確です」


「ありがとうございます。

 私は農作業時、牛一頭一頭を識別しますので」


「牛より難しいと思いますけど」

 彩香がぼそっと言う。


 蒼牙2000・改は続けた。


「なお、この悪戯は三分以内に三名の血圧を上昇させています。

 次回からは事前に申告してください」


「はい……」

「気をつけます……」


 双子は珍しくしおらしかった。


 ステージは無事成功。

 観客は大喝采。


 終了後、美月が言った。


「もうな、見分け係は蒼牙でええやろ」

「賛成です」

「人間より信用できます」


 澄香と澪香は、そっと耳打ちした。


「……ねえ」

「なに?」


「次は声入れ替えよっか」

「蒼牙に勝てるかな」


 背後から、即答が返ってきた。


「不可能です」


 双子は顔を見合わせ、

 声をそろえて言った。


「ですよね」


 ――こうして、

 迫田ツインズを見抜ける存在は、

 ヒロ室では唯一、トラクターになった。


 戦隊ヒロインプロジェクトは、

 今日も平和で、

 ちょっとだけ頭が痛い。

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