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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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468/530

見分けようとした瞬間から、もう負けている ――迫田ツインズ、太陽属性につき識別不能――

その双子は、最初から明るかった。

 それも「性格が明るい」というレベルではない。

 日照時間そのものを性格に変換したタイプの明るさだった。


 迫田澄香と迫田澪香。

 宮崎県、太陽が燦々と降り注ぐ土地の出身だけあって、二人そろって朗らかで、穏やかで、誰とでも自然に距離を詰められる。


「よろしくお願いします!」

「お願いします!」


 声のトーン、笑顔の角度、軽い会釈の深さまで完全一致。

 挨拶を受けたヒロ室スタッフは、無意識に名簿を二度見した。


 美人。

 明朗快活。

 身体能力も高い。

 しかも正義感があり、話も通じる。


 戦隊ヒロインとしての適性は――

 及第点どころか、初日から大幅に合格点超えだった。


 戦闘訓練では息が合いすぎていて、

 片方が動けば、もう片方も同じ角度、同じタイミングで動く。


「完璧やな……」

「ただ一つ問題がある」


 誰が、どっちか分からない。


 立ち姿。

 歩幅。

 頷く癖。

 考えるときにほんの少し首を傾ける角度。


 全部同じ。


 既存メンバーとも、あっという間に馴染んだ。

 昼休みには自然と輪の中心にいて、

 誰かが話し出すと、二人で同時に笑う。


 そのたびに周囲が一瞬だけ止まる。


「……今、どっちが笑った?」

「……両方です」


 混乱しているのは、いつも周囲だけだった。


 ある日のイベント前。

 台本チェックの時間。


 おっとりした歌姫、藤原詩織が、真剣な顔で台本を抱えていた。


「えっと……ここで、澄香さんが一歩前に出て……」


 詩織は顔を上げ、目の前の双子を見る。


 ――二人とも、にこにこしている。


「……えっと……」


 一歩踏み出したのは、右。

 同時に、左も半歩動いた。


「……あれ?」


 詩織、台本を見る。

 顔を上げる。

 もう一度見る。


「えっ……えっ?」


「はい!」

「はい!」


 二人同時。


「……今、どちらに話してましたっけ……?」


 詩織の声が、ほんのり揺れる。


 周囲がそっと目を逸らす中、

 迫田ツインズはどこ吹く風だった。


「大丈夫ですよー」

「いつもこんな感じなのでー」


 穏やか。

 そして順応が早い。


 詩織は完全に思考が追いつかなくなっていた。


「じゃ、じゃあ……澄香さんは……えっと……」


 指差した瞬間、

 二人とも同じ角度で小さく首を傾げた。


「……あっ……」


 その場にいた全員が、心の中で同じことを思った。


 ――あ、これ詰んだな。


 最終的に詩織は、

 台本を胸に抱えたまま、小さく笑った。


「……もう、二人まとめてでお願いします……」


 その言い方があまりにも優しく、

 あまりにも降参宣言だったので、

 場はなぜか和やかな空気に包まれた。


 しかし問題は深刻だった。


「何か……見分け方はないのか」

「声は?」

「同じ」

「利き手は?」

「同じ」

「雰囲気?」

「同じ」


 ヒロ室では、珍しく真剣な会議が始まった。


「ピンマイクの色を変える?」

「入れ替わる」

「髪留め?」

「揃える」

「名札?」

「外す」


 本人たちは、終始にこにこしている。


「そんなに困ってるとは思わなかったです」

「でも面白いですよね」


 悪意ゼロ。

 天然100%。


 こうしてヒロ室は理解した。


 迫田澄香と迫田澪香は、

 見分けようとした時点で負けるタイプの双子である。


 そしてこの日を境に、

 公式書類にはこう書かれるようになった。


 ――迫田ツインズ(同時運用推奨)


 識別は、後回し。

 まずは太陽属性の笑顔で、今日も現場は明るく照らされる。


 なお、

 本人たちは最後まで「そんなに似てます?」という顔だった。

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