見分けたら負け――迫田ツインズ、元バスガイドMCを完全撃沈
戦隊ヒロインプロジェクトに、前代未聞の混乱要員が加入した。
赤嶺美月の紹介で参加が決まった双子――迫田澄香と迫田澪香。
書類審査の段階で、ヒロ室はざわついた。
「……写真、同じにしか見えへん」
「名前だけ違います」
「双子……か」
実物を見た瞬間、その空気は確信に変わる。
「うわっ……」
「ほんまにクローンやん……」
美月の一言が、全員の心を代弁していた。
顔、背丈、雰囲気、声の高さ。完全一致。
間違い探しを始めた者から脱落していくタイプの双子である。
問題はすぐに表面化した。
戦闘訓練である。
「澄香、前!」
「了解!」
「いや、それ澪香や!」
「どっちでも前や!」
動きは完璧。
連携も反応も一級品。
だが、誰が誰か分からない。
「今、誰が被弾した?」
「……二人とも無傷です」
「そういう話ちゃう!」
この状況を見て、隼人補佐官が静かに笑った。
「……逆に考えよか」
「逆?」
「見分けられんのを、武器にする」
こうして生まれたのが、
《双子かく乱戦術》。
「敵は数を誤認する」
「入れ替わっても気づかん」
「指揮さえ慣れれば最強や」
現場スタッフは顔を引きつらせたが、
作戦は即実戦投入される。
初陣は千葉県松戸市。
競輪場のある街で、イベント慣れした観客が集まる場所だ。
ステージに迫田ツインズが登場した瞬間、
客席が一段階ざわめいた。
「双子!?」
「美人が二人!?」
「分裂した!?」
歓声が波のように広がる。
だが、この日もっとも混乱したのは――
MC担当・熊本出身の元バスガイド、西里澄香だった。
「さぁさぁ皆さん!
本日初登場、迫田……えー……」
止まる。
「……あれ?」
会場がざわつく。
「えーっと、どっちが澄香さんで、どっちが澪香さんか……
ちょ、ちょっと待ってはいよ!」
迫田ツインズ、同時に一歩前へ。
「……はい?」
西里澄香、完全フリーズ。
「ま、まっとってはいよ!
こっちが……いや、あっちが……
……どっちたい!?」
客席、大爆笑。
「す、すみません!
熊本でも双子ガイドは経験なかです!
こぎゃん似とるとは聞いとらんとです!」
正直すぎる熊本弁が火に油を注ぐ。
舞台袖でみのりが目を丸くした。
「え……あの澄香さんが、あそこまで混乱するの初めて見ました……」
西里澄香、必死に立て直す。
「えーっとですね!
今日はですね!
二人まとめて迫田ツインズでよかですたい!」
その瞬間、美月が畳みかけた。
「細かいこと気にしたら負けや!」
「見分けられへんのが、もう完成形やねん!」
拍手、喝采。
混乱は笑いへと完全に変わった。
イベント後、隼人補佐官は満足そうに腕を組む。
「想定以上やな」
「敵だけやない、味方も混乱する」
「それ、あかんやろ」
「いや、使える」
こうして迫田澄香と迫田澪香は、
**“見分けられないこと自体が戦力”**という
戦隊ヒロイン史上でも異例のポジションを確立した。
――見分けたら負け。
元バスガイドMCすら沈めた双子は、
今日も何事もなかった顔で、二人並んで前線に立つ。
なお、
本人たちは最後までどっちがどっちでも気にしていなかった。




