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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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466/530

二人産まれたがよ!――なお二十年後も誰かわからん

迫田澄香と澪香の美人双子姉妹は宮崎県都城市出身。

畜産と焼酎の街。霧島連山の麓で自然と食文化が豊かに息づくこの地で

実家は従業員数十人、飼育している乳牛は数百頭にも及ぶ大規模畜産牧場。


200X年。

迫田牧場の朝は、たいてい牛の鳴き声で始まる。だがその日は違った。


「おい!!産まれたど!!」

「一人か!?」

「二人や!!」

「二人ぃ!?」


 父の声が牛舎に反響し、母の叫びが事務所を突き抜け、親戚が勝手に集まり、なぜか従業員まで泣き出した。


「双子やど!!」

「めんこかぁ!!」

「牧場始まって以来やが!!」


 生まれてきたのは、そっくり同じ顔の女の子が二人。

 助産師が「こちらがお姉ちゃんで…」と説明するそばから、父はもう混乱していた。


「……どっちが先やったか?」

「さっき言われたやろが!」

「聞いたけど忘れた!」


 名前はすぐ決まった。

 澄香すみか澪香みおか


「響きがよか!」

「将来ぜったい美人になるが!」

「うちの牧場の希望や!」


 このとき、誰もが思った。

 ――まあ、成長すりゃ見分けはつくやろ。


 その考えが甘かった。


 幼稚園。


「迫田さーん!」

「はい!」

「……二人とも来んでええ!」


 運動会。


「澄香、右!」

「違う、それ澪香や!」

「どっちでも走っとるが!」


 家でも同じだ。


「澄香、風呂!」

「はーい」

「澪香も入ってくるな!」

「もう入っちょる」


 親戚は早々に諦めた。


「まぁ二人とも元気やし」

「どっち呼んでも返事するし」

「一人扱いでよかろ」


 だが、見分けている存在がいた。


 乳牛である。


 澄香が来ると、三号牛が寄ってくる。

 澪香だと、なぜか五号牛が鼻を鳴らす。


「……なんで牛が分かるとや」

「人間より長く一緒におるけんか?」


 さらに、実家で飼っている柴犬――ポン太。


 澄香が帰ると、ポン太は静かに尻尾を振る。

 澪香だと、なぜか一回だけ吠える。


「ワン!(澪香)」

「……今、判定入ったな」

「入ったな」


 ポン太、正答率100%。


 高校を卒業し、二人は揃って西日本の名門大学へ進学。

 都城を出る日、母は涙を拭きながら言った。


「……どっちがどっちか分からんけど」

「どっちも気ぃつけて行きない」


 大学でも事件は起きる。


 学部が違うのに、たまに入れ替わる。


「今日、澪香は講義どうやった?」

「……それ澄香や」


 周囲は誰も気づかない。

 本人たちだけが楽しそうだった。


 そして成人式。


 二十歳になった二人が、晴れ着姿で帰ってきた。


「うわぁ……」

「めんこかぁ……」

「……で、どっちが誰や?」


 親戚一同、全滅。


 父は振袖を見て感動し、次の瞬間に混乱した。


「この帯は澄香か?」

「知らん」

「こっちは?」

「知らん」


 だが牛は迷わない。

 ポン太も迷わない。


「ワン!(澪香)」

「……今の吠え方は確信犯やな」


 母は笑って言った。


「もうよか」

「最初から二人やったし」

「今さら区別つかんでも」


 迫田ツインズ。

 人間には永遠に見分けがつかないが、

 愛情だけは最初から二人分、きっちり注がれている。


 ……たぶん、牛とポン太のおかげで。

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