双子は二人、粗品は一個――美月、経理に噛みつく
迫田澄香と迫田澪香。
空前絶後の美人双子姉妹が、揃って戦隊ヒロインプロジェクトへの加入を決めた瞬間――。
紹介者である赤嶺美月の目は、すでに一点を見据えていた。
そう。
粗品である。
ヒロ室フロントの安岡真帆から、厳かに手渡される白い封筒。
その重みは、ここまで大学中を駆けずり回った努力の結晶。
封を切る。
中身を見る。
「…………」
そして、間髪入れずに一言。
「……ショボっ」
この反応、もはや伝統芸である。
ちょうど近くにいた月島小春が、ちらりと封筒を覗き込む。
「美月パイセンも、粗品もらえたんですね」
「なぁ小春。これの麗奈ちゃんプリペイドカード、いくら分やった?」
「え? 私のときは……2000円分でしたけど……」
美月の眉が、ピクリと動いた。
「……ちょい待ち」
そして、ヒロ室の奥に向かって、一直線。
「真帆さーん! 佳乃さーん!!」
経理デスクにいた谷口佳乃(通称:けちのん)が、嫌な予感しかしない顔で振り向く。
「なんでっか美月はん……」
「おかしいやろ!!」
美月、机をバンと叩く。
「双子やで!? 二人やで!?
澄香と澪香、二人まとめて紹介したんやで!?
なんで粗品が一個やねん!!」
真帆が、元政治家秘書らしい曖昧な笑みを浮かべる。
「……そこは想定外だったといいますか……」
佳乃は腕を組み、泉州弁で一刀両断。
「美月はん、常識的に考えて
粗品は一案件につき一個まででっしゃろ」
「どこにそんな決まり書いてあんねん!!」
ヒロ室スタッフで法科大学院に通っている内田あかねが、静かにメガネを押し上げる。
「明文化されていないのは、確かに問題ですね。
ただし、二つ渡すという結論には……至らないと思われます」
「めっちゃ濁すやん!!」
美月のゴネは、なおも止まらない。
「なんやねんこのケチな組織!
米国大使館占拠事件解決したときはなぁ!
大統領直々に晩さん会やったんやぞ!!」
佳乃、即答。
「国民の皆様から頂いた血税で運営してるんやから、こんなモンやろ。
皆さまの戦隊ヒロインでおます」
「そらそうやけど……!」
ついに根負けした真帆と佳乃は、顔を見合わせ、小声で相談。
「……他のヒロインには絶対内緒ですよ?」
「国家機密でっせ?」
そっと差し出される、もう一つの封筒。
美月、勝利を確信して開封。
中から現れたのは――
麗奈ちゃんクリアファイル。
「…………」
美月、真顔。
「この麗奈ちゃんのウインク、なんかムカつくねん」
そこへ、ひょいと顔を出す江波のどか。
「なぁ美月ぃ、粗品はなんだったんや?」
美月、即座に返す。
「国家機密や」
「えぇ~……」
「のどかは広島支部長なんやろ?
広島で誰かスカウトして紹介すればええねん」
のどか、腕を組んで唸る。
「ぐぬぬ……」
――数秒後。
「あっ!!」
目を見開く。
「よさそうなん、おったわ」
その瞬間、
ヒロ室のどこかで、また新しい火種が生まれた。
美月は、手元の麗奈ちゃんクリアファイルを見下ろしながら、ため息をついた。
「……まぁ、ええわ」
粗品はショボい。
だが、双子は本物。
そして、戦隊ヒロインプロジェクトのお友達紹介キャンペーンは、
今日も静かに、だが確実に、次の波乱を呼び込んでいた。




