粗品がショボすぎて、双子が来た――美月、大学を揺らす
戦隊ヒロインプロジェクトには、表向きにはあまり語られないが、内部ではそこそこ重要な制度がある。
その名も――「お友達紹介キャンペーン」。
ヒロ室フロントの安岡真帆が、慢性的なヒロイン不足をどうにかしようと考案した制度で、
「ヒロインがヒロインを紹介し、めでたく採用された場合、紹介者に粗品を進呈する」
という、実にシンプルかつ現実的な仕組みだった。
結果は、大成功である。
大宮麗奈がイベント仲間の森川美里を引き込み、二人並べばイベント会場が一気に華やぐ。
館山みのりは神代なつめを連れてきて、「土佐の突進娘」として戦闘でもイベントでも大活躍。
西川彩香は三好さつきを紹介し、阿波のスピードスターとして清楚な透明感で爆発的人気。
月島小春が呼び込んだ阿部柚葉は、穏やかな秋田美人ながら尖った大胆さも併せ持ち、従妹の小野寺彩音まで加入内定。
山口唯奈に至っては、中村玲という技術者を「週末ヒロイン」に仕立て上げ、開発と現場の架け橋にしてしまった。
――制度としては、文句なし。
ただし。
粗品だけが、全員の期待を裏切っていた。
内容は、
・麗奈ちゃんプリペイドカード 2000円分
・戦隊ヒロイン手ぬぐい
手ぬぐいは、堀井琴葉の実家・堀井商店が企画したものの、
生産委託先との折り合いがつかず
販売に至らなかった幻の企画倒れ商品である。
受け取ったヒロイン、全員が同じ反応をした。
「……ショボっ」
美月は気になって仕方がなかった。
「なぁなぁ、粗品なんやったん?」
麗奈「国家機密よ♡」
みのり「国家機密です」
彩香「自分で見つけてきぃ!」
小春「美月パイセンは交友関係広いんだから紹介すればよくないっすか?」
唯奈「国家機密だっぺよ」
全員、同じ対応。
「なんやねんそれ! 気になるやろ普通!」
ここで、美月は決断した。
「しゃあない。自分で取りに行くわ」
向かった先は、近畿学院大学。
四万人キャンパス。
その中でも「知らない人はいない」と噂される存在――
迫田澄香・迫田澪香。
宮崎県都城市出身、美人双子姉妹。
キャンパスは違えど、名前だけで通じるレベルの有名人。
初対面で、美月は思わず声を上げた。
「うわっ……クローンやん……」
澄香と澪香、同時に首を傾げる。
「初めまして」
「初めまして」
リアクション、完全一致。
「戦隊ヒロイン、興味ない?」
澄香「あります」
澪香「……どうしようかなぁ」
言葉は違うのに、動きは一緒。
「いや、そこズレるんや!」
だが美月の説得は雑で早い。
「とりあえず話聞くだけ聞こ。粗品出るし」
――この一言で、澪香も落ちた。
数日後。
ヒロ室にて、面談。
対応するのは安岡真帆と小宮山琴音。
「えー……こちらが澄香さんで……」
「いえ、そちらが澪香さんです」
「……あれ?」
座る位置を変えても、声を聞いても、混乱は止まらない。
琴音がメモを取りながら呟く。
「今どっちが喋りました?」
二人同時に答える。
「私です」
「私です」
真帆、頭を抱える。
「……番号振ります?」
最終的に琴音が言い切った。
「二人そろって、10点満点中100点ずら」
評価基準が崩壊している。
こうして、
前代未聞、空前絶後、スーパー戦隊史でも聞いたことのない
双子姉妹ヒロインが誕生した。
なお、美月が受け取った粗品は――
「……やっぱショボっ」
だがその顔は、どこか満足げだった。
粗品はさておき、
大学を揺らしたスカウトは、間違いなく大成功だったのだから。




