幻のふとん屋を追え!〜聖地巡礼(迷子多発)事件〜
今や戦隊ヒロイントークショーの定番となった伝説の締め――
月島小春の「みんなで大宮ふとん店に買い物行くぞー!!」
観客の「オーーーッ!!」
そして麗奈の「来なくていいから〜!!」
この三段オチが全国を駆け抜けた結果――
悲劇(という名の喜劇)が始まった。
麗奈の実家・大宮ふとん店は、上尾市の商店街の外れ。
いや、外れというより地図のバグ地帯。
Googleマップでもピンが空き地に刺さる。
SNSでは「#ふとん屋が見つからない」「#幻のふとん店」などのハッシュタグが乱立。
ファンたちは口々に語る。
「ナビ通り行ったら畑だった」
「住所で検索したら“該当なし”って出た」
「電話したら『おかけになった番号は現在使われておりません』だった」
実際、その電話番号――市内局番が2ケタ。
昭和の遺物である。
しかも看板の「大宮ふとん店」の“と”の字が消えかかっているため、
写真にはどう見ても「大宮ふ ん店」。
SNSには無数の写真がアップされ、コメントが並ぶ。
「“ふ ん店”て何屋?」
「まさか公序良俗に反する店じゃ…?」
「違う違う、戦隊ヒロインの実家!」
「本当に存在したの!?」
もはや都市伝説扱いである。
実際に訪れた勇者たちはこう報告する。
「営業日が読めない。昨日は開いてたが今日はシャッター」
「看板の下でおばあちゃんが猫にえさをやってた」
「店の中に入ったら“レジ壊れてるから計算お願いね”ってそろばん渡された」
麗奈はSNSで謝罪する羽目に。
「大宮ふとん店は観光地ではありません!!
営業時間も気分です!!」
だが、逆効果だった。
コメント欄は祭り状態。
「気分営業www」
「営業時間=神の思し召し」
「#行ってみたけど閉まってた選手権」
ついにはニュースサイトが取り上げた。
『戦隊ヒロインの実家・“消えかけのふとん店”に聖地巡礼者殺到』
取材を受けた麗奈父は語る。
「え? うち、そんな人気なん?」
祖母「今日も誰か来たけど、“ふとんより話が聞きたい”言うてたよ」
――この店、売るより語るほうが得意らしい。
数日後、月島小春のMCトークショー。
例の締めが来た。
「さあ! 最後は恒例! せーの!」
観客「みんなで大宮ふとん店に買い物行くぞー!!」
麗奈「もう来なくていいからーっ!! 本当に迷うからーっ!!」
だが観客は熱狂。
「ふ ん店行くぞー!!」
「座標不明の聖地へー!!」
「方位磁石持ってけー!!」
麗奈、頭を抱える。
みのりが微笑んで言う。
「千葉にはちゃんと営業してるふとん屋ありますよ」
小春「でも面白くないでしょ、それじゃ」
――結局その夜も、上尾の商店街の外れで電話が鳴った。
プルルル…プルルル…
祖母「はいはい、“大宮ふ ん店”です」
電話「お店はどこにありますか!?」
祖母「えーっとねぇ……わたしもよくわかんないのよねぇ」
ブチッ。
――そしてまた誰かがSNSに書き込む。
「聖地巡礼、失敗。
でも、店は確かに“存在しないわけじゃない”」
上尾の夜風にゆらぐ、色あせた看板。
「大宮ふ ん店」――その存在は今日も幻のまま。
疑惑は、ますます深まった。




