責任を背負った瞬間、カレンダーが敵に回った
中村玲が気づいた時、
カレンダーから赤い文字が消えていた。
土曜日?
ない。
日曜日?
概念だけ残っている。
「……あれ?」
月曜から金曜までがびっしり詰まった予定表を見て、
玲は静かに首を傾げた。
「週末……どこ行った?」
答えはすぐに来た。
「中村さん、今週末の現場、三か所です」
事務方の声が、やけに明るい。
「え、週末“も”ですか?」
「いえ、週末“が”です」
その瞬間、
“週末ヒロイン”という肩書きが、
労務管理の敵として正式に認識された。
「いや、ちょっと待ってください!」
玲は慌てて言う。
「私は週末ヒロインであって、
週末を消費する人材では——」
「責任者は現場に出る、基本です」
冷静な返答。
逃げ道、完全封鎖。
その頃、常陸太田市。
唯奈は畑の端で、
蒼牙2000・改に話しかけていた。
「最近さ、玲さん来ねぇっぺ」
《解析:責任付与後、
週末稼働率が94%に上昇しています》
「それ完全に社畜じゃん」
《否定できません》
「週末ヒロインって、
もっとキラキラしてなかった?」
《仕様変更が行われました》
「誰の判断だ?」
《中村玲さん本人です》
唯奈は空を見上げた。
「……自分で首しめてんなぁ」
その頃、拠点では美月がキレていた。
「なんやそれ!
週末ヒロインが週末おらんて!」
「本末転倒どすなぁ」
綾乃は落ち着いている。
「でもな、美月。
責任を背負ういうんは、
“逃げない”と決めた証拠や」
「分かるけど、
それで倒れたら意味ないやん!」
そこへ、フラフラの玲が現れた。
「……おはようございます」
「今、何曜日や」
「……全部です」
完全に壊れている。
唯奈が心配そうに寄ってくる。
「玲さん、寝てる?」
「四時間を三日に分けて……」
「分けるな」
蒼牙2000・改が真顔で言う。
《警告:このままでは
“週末ヒロイン”ではなく
“連勤ヒロイン”になります》
「それ前も言ってた!」
《改善されていません》
「だって責任が……」
玲は小さく笑った。
「逃げたくないんです。
せっかく理屈が届いたから」
唯奈は少し考えて、言った。
「じゃあさ」
「?」
「週末、うちの畑でテストしよ。
仕事だけど、仕事っぽくないやつ」
《提案:心理的休養効果が見込めます》
玲は一瞬、きょとんとして——
そして、久しぶりにちゃんと笑った。
「……それ、最高ですね」
美月が腕を組む。
「ほら見い。
ヒロインは一人で背負うもんちゃうねん」
綾乃もうなずく。
「責任いうんは、
分け合ってこそ軽くなるもんどす」
蒼牙2000・改が締める。
《では結論:
週末は消えましたが、
仲間は残っています》
「ポエム言うな」
《仕様です》
——責任を背負ったら、
確かに週末は消えた。
でも代わりに、
逃げない仲間と、
笑える現場が残った。
次の週末も、
きっと仕事。
でもそれは、
もう“独り”じゃなかった。




