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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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457/483

全力で走ったら、数式が息切れした件 ――週末ヒロイン中村玲、理屈に追いつかれる――

青海のアイドルフェスタが終わった翌週。

中村玲は、長野県諏訪市にある諏訪精巧機電研究所の自席で、魂の抜けた顔をしていた。


イベントは成功だった。

コールはもらえた。

拍手もあった。

唯奈には「今日はちゃんとヒロインだったっぺよ」と言われた。


だが——

机の上にあるのは、いつもの設計図だった。


振動制御。

重量配分。

冷却効率。

そして赤字で書かれた《未解決》。


「……で?」


背後から、上司の声が落ちてきた。


「イベントは楽しかった? それで、この設計に何が活きるの?」


ぐうの音も出ない。

玲は椅子ごと小さく回転し、天井を見上げた。


「全力でやったら、何か分かる気がしたんですけど……

それが、何かは……」


「つまり、“気持ち”だね」


上司は優しく、そして冷酷だった。


「技術は気持ちじゃ動かないよ」


その夜。

常陸太田市の畑では、唯奈が蒼牙2000・改と並んで耕運機を眺めていた。


「蒼牙ぁ、玲さん、元気なさそうだったな」


《解析結果:精神的CPU使用率が高い状態と推測されます》


「むずかしい言い方すんな。

要は、頭と体がズレてんだっぺ」


《同意します。人間はよくズレます》


数日後。

諏訪精巧機電研究所主催の技術デモ兼・地域向け説明会が開かれた。


客席には地元企業、自治体職員、学生。

なぜか最前列に、美月・綾乃・麗奈が腕組みで鎮座している。


「圧、強ない?」

「圧やね」

「玲、がんばれ〜」


説明役は——中村玲。


スライドは完璧。

数式も正確。

だが、客席は無音だった。


そのとき。


「ちょっといいか?」


唯奈が手を挙げた。


「それって要するに、

“現場で無理させっと壊れる”って話だっぺ?」


会場がざわつく。


玲は一瞬止まり——

そして、笑った。


「あ、はい。

……そうです。まさに、それです」


スライドを閉じ、玲は言葉を変えた。


「机の上では問題なかったんです。

でも、現場では違和感が出た。

それは、私が“使われ方”を知らなかったからです」


美月が小声で言う。


「お、言葉が人間になってきたやん」


「全力でやってみて、初めて分かりました。

理屈は、あとから追いついていいんだって」


空気が変わった。

質問が飛ぶ。

学生の目が輝く。


説明会が終わったあと、上司は一言だけ言った。


「……現場に出た技術者は、もう戻れないな」


夜。

自販機の前で、唯奈と玲が並ぶ。


玲「被験者……いや、唯奈さん」

唯奈「今、言ったっぺ」

玲「今回は、言いました」


「正直でいい。

理屈はな、全力の後ろから歩いてくるもんだっぺ」


《結論》

蒼牙2000・改が静かに告げる。


《週末ヒロイン活動は、技術者を進化させます》


玲は、少しだけ胸を張った。


——週末ヒロイン中村玲。

全力の先で、ようやく理屈に追いつかれる。

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