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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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453/460

その焼きそば、ふるさとの味につき最適化不要  ――蒼牙2000・改、太田焼きそばに正論をぶつける――

群馬県太田市。

すみれコーチの実家工場は、今日も油と鉄とソースの匂いが混じり合っていた。


修理中の機材の横で、ホットプレートが唸りを上げている。

太田焼きそばだ。

極太麺、濃いソース、キャベツ多め。肉はその日の気分。

理屈はない。あるのは量と勢いだけ。


「やっぱこれだよなぁ」


唯奈は箸を止めることなく、焼きそばを口に運ぶ。

その横で、蒼牙2000・改が静かに起動音を鳴らした。


「……確認します。

その太田焼きそば、栄養設計が未調整です」


工場内の空気が一瞬、固まる。


すみれコーチがゆっくり顔を上げる。

「……あんた、今なんて言った?」


蒼牙2000・改は落ち着いた丁寧語で続けた。


「炭水化物過多、塩分高め、タンパク質不足。

作業効率を考慮すると、連続摂取は非推奨です」


唯奈が箸を止める。

「蒼牙……それ、太田焼きそばだっぺよ?」


「承知しています」


蒼牙2000・改は少しだけ間を置いた。


「私は愛媛県松山市の井坂農装工場で生産され、

群馬県太田市のこの工場で魔改造されました。

つまり、太田市は私の第二の故郷です」


ドヤ顔はできないが、声には妙な誇りがあった。


「ゆえに、太田焼きそばは“ふるさとの味”でもあります。

……だからこそ、私はうるさいのです」


「めんどくせぇ故郷意識だな!」

すみれコーチが即ツッコむ。


「地元の味は理屈で食うもんじゃないの!」

「腹が減ってるときに一番うまいのが正解!」


蒼牙2000・改は一切動じない。


「感情論は理解できます。

しかし、健康は長期的資産です」


唯奈がムッとする。

「オラの体はこれで出来てんだっぺ。

十八年分の実績があるっぺよ」


「その実績は評価します」

蒼牙2000・改は即答した。

「ですが、それは“若さ補正”です」


すみれコーチが吹き出した。

「言い切った!」


ここから論争が始まった。


すみれコーチは

「重労働×濃い味=正義理論」を展開。


唯奈は

「畑ではカロリーが正義理論」で応戦。


明日香は途中から

「巫女的には“お腹いっぱい=吉兆”です」と

どっちつかずの立場に逃げた。


しかし蒼牙2000・改は、満を持して最終案を提示する。


「では、妥協案を提案します。

“太田焼きそば・蒼牙式改”です」


・麺は同じ

・ソースは減塩

・肉は増量

・温玉追加

・作業量に応じた摂取量調整


全員が一斉に首を横に振った。


「それは太田焼きそばじゃない」

「余計なことすんな」

「誰がそんな賢い焼きそば食うんだ」


蒼牙2000・改は沈黙した。


……数時間後。


誰にも見られない場所で、

唯奈はこっそり“蒼牙式改”を口にした。


「……」


もぐもぐ。


「……悪くねぇ」


蒼牙2000・改が即座に反応する。

「味覚の進化を確認しました」


「調子乗んな!」

唯奈は赤面しながら箸を置いた。


その夜、すみれコーチが言う。


「でもさ、今日は普通のやつで締めよ」


蒼牙2000・改は一拍置いて答えた。


「了解しました。

本日は“ふるさと優先日”とします」


こうして

太田焼きそばは守られ、

蒼牙2000・改は少しだけ人間社会を理解し、

誰も勝っていないのに全員が満腹になった。


工場には今日も、

鉄と油と――そしてソースの匂いが漂っている。

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