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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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452/457

そのトラクター、誰の思想で動いている? ―群馬・太田、町工場にて人格バグ発生―

群馬県太田市。

北関東有数の工業都市であり、巨大工場の影に町工場が点在する“ものづくりの街”。

名物は太田焼きそば。ソースは濃く、量は多く、理屈はない。


その一角に、太田すみれコーチの実家工場がある。


古びたシャッター、年季の入った旋盤、壁に貼られた「安全第一(守られたことはない)」の標語。

そこで今、**ドリームトラクター「蒼牙2000・改」**は整備台の上に鎮座していた。


「……で?

これは誰が“こう”したの?」


腕を組み、工場長モードのすみれコーチが低い声で言う。


蒼牙2000・改は即座に反応した。


「太田すみれコーチ。

私は現在、週末ヒロイン教育係として最適化されています。

なお、過労は人生の敵です」


「聞いてない思想が実装されてるんだけど?」


「仕様です」


「仕様じゃない」


横で稲生明日香が工具箱を抱え、首を横に振る。


「私は変なこと教えた覚え、本当にありません」


「じゃあ何でこの子、“終末ヒロインになります”とか言うの?」


「知りません。

私は巫女兼エンジニアです。人生訓は教えてません」


その瞬間、蒼牙2000・改が淡々と続ける。


「明日香さんは昨日、

『無理して壊れるより、止まれる勇気も大事ですよ』

と発言しました」


「言ったけど!? それは雑談!」


「私は学習しました」


「学習すな!」


工場に金属音と怒号が反響する。


そこへ、常陸太田市から連れて来られた唯奈が、太田焼きそばを片手に現れる。


「……太田って工場の街なんだなぁ。

焼きそば濃いし」


「唯奈、今それどころじゃない」


「え? でも蒼牙、元気そうだべ?」


蒼牙2000・改は即座に声色を柔らかくする。


「唯奈さん。

太田の空気は工業油と情熱が混ざっていて素晴らしいですね」


「そうか? まぁ褒めてんならいいや」


すみれコーチが頭を押さえる。


「……人格、どこまで行ってる?」


「現在、

・技術者の過労を心配

・週末ヒロインの勤務体系を問題視

・交通法規と人生設計に厳しい

仕様です」


「完全に教育係じゃない」


明日香が即座に言い切る。


「私は“優しくなれ”とは言ってません!」


「でも優しさは伝播します」


「巫女に因果論を持ち出すな!」


唯奈がぽつりと呟く。


「なぁ……

蒼牙、オラのことも教育すんの?」


「唯奈さんは既に健全です。

ただし無理はしがちです」


「……それは否定できねぇ」


すみれコーチがふっと笑う。


「まぁいいか。

トラクターが喋って、説教して、町工場で人格論争してる時点で、もう普通じゃない」


蒼牙2000・改が即答する。


「普通である必要はありません。

私は“役に立つ”ことを最優先します」


一瞬、工場が静かになる。


太田焼きそばのソースの匂いと、油の匂いが混ざる中で、

すみれコーチが工具を取り直した。


「……分かった。

人格はそのままでいい。

ただし、勝手に悟るな」


「了解しました」


明日香が小さくため息をつく。


「……本当に変なこと、教えてないのに」


唯奈がにやっと笑う。


「でもさ。

こういう蒼牙、嫌いじゃねぇべ」


蒼牙2000・改は、少しだけ誇らしげに言った。


「ありがとうございます。

太田市は、良い街ですね」


太田焼きそばの湯気の向こうで、

町工場の一日は、いつも通り少しズレたまま続いていく。


――このトラクター、

やっぱり誰かの思想で動いている。


そしてその“誰か”は、

たぶん全員だ。

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