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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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449/482

被験者じゃないって言ってるっぺ!──現場に出た技術者は、もう机に戻れない

中村玲は、困っていた。

正確には、完全に想定外の場所に立たされていた。


「……えっと、ここが“現場”ですね」


目の前に広がるのは、舗装もままならない訓練用フィールド。

砂、土、段差、風。

ホワイトボードもなければ、レーザーポインターもない。

あるのは、戦隊ヒロインたちの気合と汗と、なぜかトラクターだった。


「ようこそ現場へだっぺ」


そう言って笑ったのは、魔法少女兼・農民兼・戦隊ヒロインの

山口唯奈(18)。


「今日は玲さんも一緒に動くって聞いたっぺよ」


「い、いえ、私は観測と記録が主で……」


「つまり被験者じゃねぇけど、横で見るんだっぺ?」


「……今“被験者”って言ってません」


「言ってないっぺ」


「言いました」


「言ってない」


このやり取りを、すでに五回目である。

周囲では、蒼牙2000・改が静かにエンジン音を響かせながら、

「お二人とも、議論は後でお願いします」

と丁寧に割り込んできた。


訓練が始まる。


唯奈は装備を着け、軽く地面を蹴る。

その動きは、数値では説明できない“間”と“勢い”に満ちていた。


「……速い」


玲は思わず呟く。


設計上のスペックでは、確かに問題ない。

だが、実際に動くと話が違う。


「重くないんですか?」

「重いっぺ」

「怖くないんですか?」

「怖いっぺ」


「……なのに?」


「でも、やるっぺ」


その言葉に、玲は一瞬、言葉を失った。


データ上では「負荷」。

設計書では「想定範囲内」。

だがそれを受け止めているのは、人間の身体と気持ちだった。


蒼牙2000・改が淡々と補足する。


「中村玲さん、数値化できない不安と覚悟は、実戦では重要です」


「……トラクターに諭される日が来るとは」


唯奈はケラケラ笑った。


「机の上じゃ分かんねぇこと、いっぱいあるっぺ」


訓練が進むにつれ、玲は気づく。

装置が想定通りに動いても、

人の判断、恐怖、疲労で結果は変わる。


「……私、今まで“正しい設計”だけ見てました」


「今は?」


「……“使われ方”を見てます」


唯奈は満足そうに頷いた。


「それでいいんだっぺ。

 現場はな、正解より“生き残る方法”が大事なんだ」


訓練終了後、玲はノートを閉じた。

そこには、数式よりもメモが多かった。


・装着時に緊張すると手が震える

・音が大きいと集中力が切れる

・「怖い」を言える空気が必要


「……もう机に戻れない気がします」


玲が呟くと、唯奈は即答した。


「戻らなくていいっぺ」


蒼牙2000・改も続く。


「中村さん、あなたはすでに“こちら側”です」


玲は苦笑しながら、ヘルメットを外した。


「……被験者、じゃなくて」


「言ったっぺ?」


「言ってません!」


夕方の風が吹く。

現場は今日も、想定外だらけだ。


そして中村玲は、もう気づいてしまった。

一度現場を知った技術者は、二度と机の上だけでは生きられないということを。


その横で唯奈が、のんきに一言。


「次は畑でも試すっぺか?」


玲は、静かに天を仰いだ。


――ああ、完全に巻き込まれた。

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