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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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447/457

主役はヒロイン?いいえ、トラクターです ――後楽園、夢と土煙のヒロインショー――

都内屈指のヒーローショーの聖地。

 丸いドーム屋根と、どこか昭和の匂いが残る屋外ステージ。


 この日開催されたのは、

 戦隊ヒロインプロジェクト恒例の子ども向けヒロインショーだった。


 出演は――

 河内魂の塊・美月、

 千葉の叡智にして実務派アタッカー・みのり、

 ほわっとしているのに芯が強い・小春、

 播州気質のストイック戦士・彩香、

 そして土佐の突進娘・なつめ。


 客席には、

 ヒロインの名前が書かれた手作りうちわ、

 色とりどりのサイリウム、

 親に肩車された子どもたち。


「がんばえー!みづきー!」


「みのりちゃーん!」


 いつも通り。

 完璧なスタートだった。


 ――その時までは。


 悪役が登場し、

 ヒロインたちがピンチに陥った、

 その絶妙な間。


 ゴゴゴ……。


 ステージ裏から、

 明らかに場違いな重低音が響いた。


「え?」


「なにあの音?」


 観客がざわつく。


 そして、

 ステージ横から姿を現したのは――


 ドリームトラクター《蒼牙2000・改》。


 黒光りする車体。

 SUV並みの存在感。

 場違いにも程がある。


「オラの出番だっぺよー!」


 運転席から飛び降りる唯奈。


 その瞬間――


「うわぁぁぁ!!」


「トラクターだ!!」


「しゃべるやつだ!!」


 客席の視線が、

 一斉に蒼牙2000・改へ吸い寄せられた。


 ヒロイン?

 悪役?

 どうでもいい。


 完全に、

 主役はトラクターだった。


「……おい」


 美月が、マスクの下で低く唸る。


「今日の主役、

 ウチらやんな?」


 横で彩香が苦笑する。


「どう見ても、

 あのトラクターやな……」


 蒼牙2000・改が一礼する。


「皆さま、こんにちは。

 本日は子ども向けヒロインショーにお招きいただき、

 誠にありがとうございます」


「「「おおおおー!!!」」」


 拍手喝采。


「いや丁寧すぎるやろ!!」


 美月、内心ツッコミが止まらない。


 ショーは進む。

 悪役が叫ぶ。


「くっ、なんだあの機械は!」


 蒼牙2000・改、即答。


「あなたの敗因は、

 準備不足と慢心です」


「子ども向けやぞ!?」


 ヒロインたちの脳内ツッコミをよそに、

 子どもたちは大爆笑。


 ついに美月が耐えきれず、

 ステージ中央で腕を組む。


「ちょっと待ちぃや。

 なんでウチより人気あんねん」


 蒼牙2000・改が、

 すっと美月の方を向く。


「美月さん。

 嫉妬は向上心の裏返しです。

 それもまた、ヒロインの資質ですよ」


「……なんやそれ」


 美月、吹き出しそうになる。


 客席の子どもたちは腹を抱えて笑い、

 親たちは「今日なにこれ」と言いながら満足そう。


 結果――

 ヒロインショーは過去最高の盛り上がりで幕を閉じた。


 控室。


「悔しいけどな」


 美月が腕を組んで言う。


「あんな宥められ方されたら、

 文句言われへんわ」


「トラクターに説教される日が来るとは」


 みのりが肩をすくめる。


 唯奈は笑って言った。


「ええやん。

 みんな楽しそうやったっぺ」


 蒼牙2000・改が、

 いつもの丁寧語で締める。


「主役は一人では成り立ちません。

 ヒロインも、トラクターも、

 共に輝いてこそです」


 美月、ため息混じりに一言。


「……次は負けへんで」


 その言葉に、

 子どもたちの笑い声がまだ残るステージを背に、

 史上最も農業色の濃いヒロインショーは、

 大成功として語り継がれることになった。


 ――主役は、

 ヒロインか。

 トラクターか。


 それはもう、

 誰にも分からない。

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