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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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445/477

公道最速、畑最強。――蒼牙2000・改、戦場を耕す

その日、戦隊ヒロインプロジェクトに緊急出動命令が下った。

 相手は因縁の敵、ジェネラス・リンク。

 市街地と工業地帯の境界、未舗装路と高架道路が複雑に入り組んだエリアで、補給拠点を構築しようとしているという。


「地形が最悪どす……」


 参謀役の綾乃が地図を睨む。

 美月は腕を組み、彩香は軽くストレッチ。

 麗奈は既にヘルメットを抱え、あおいは上空からの侵入ルートを確認していた。


 その時だった。


「来たっぺよ」


 低いエンジン音。

 だが、どこか“普通”ではない。


 煙を上げながら現れたのは――

 黒と銀を基調にした異様なシルエットのトラクター。


「……え?」


「……トラクター?」


「……畑、近くにあったやろか?」


 全員が固まる中、運転席から唯奈がひょいと顔を出す。


「紹介すっぺ。

 オラの相棒、蒼牙2000・改だ」


 トラクターが、喋った。


「皆さま、はじめまして。

 ドリームトラクター《蒼牙2000・改》です。

 本日は戦闘支援に参りました」


「……喋った!?」


 美月が即座にツッコむ。

 彩香は思わず目をこすり、あおいは無言で二度見。

 綾乃だけが冷静に言った。


「……性能、少し確認させていただいてもよろしおす?」


「もちろんです。

 未舗装路走破、段差対応、高速移動、物資牽引。

 ついでに雑談も可能です」


「雑談は要らんわ!」


 即座に美月が切る。


 だが、戦闘が始まると空気は一変した。


 ジェネラス・リンクの戦闘員が散開。

 通常車両では追えないルートへ逃走する。


「逃げられる!」


 その瞬間、唯奈がアクセルを踏み込んだ。


「蒼牙、行くっぺ!」


「了解しました、唯奈さん。

 少々揺れますが、安全ですのでご安心ください」


 トラクターとは思えぬ加速。

 未舗装路をものともせず突っ切り、段差を跳ね、狭い農道を一気に制圧。


「な、何この安定感!?」


「速いのに揺れない!?」


「畑用やのに、これどすえ?」


 驚くヒロインたちをよそに、蒼牙2000・改は淡々としている。


「美月さん、右手前に敵影三。

 彩香さん、そちらは滑りやすいのでご注意を」


「指示まで出すんかい!」


 だが、その指示は的確だった。

 包囲、牽制、捕縛。

 戦況は一気にこちらに傾く。


 そして、麗奈が近づいた時。


「麗奈さん」


「……な、なによ」


「以前は大変でしたね。

 ですが、ご無事で何よりです」


 場が一瞬、静まる。


「……あんた、恨み言の一つも言わないの?」


「私は機械ですので、感情的な判断はいたしません。

 ただし――」


 蒼牙の声が、わずかに低くなる。


「道路交通法は守ってください。

 安全運転が最優先です」


「うっさいわね!」


 麗奈が顔を赤くし、周囲は吹き出した。


 戦闘は完全勝利。

 ジェネラス・リンクの拠点は制圧され、被害は最小限。


「……これは、思いのほかの戦力どすなぁ」


 綾乃が静かに言う。


「正直な話、トラクター言うて聞いた時は、どないや思たけどな……」


「いや、普通に強い」


「むしろ頼れる」


 あおいが頷き、彩香も納得顔。


 唯奈は照れくさそうに頭をかく。


「オラは、いつも通りやっただけだっぺ」


 その横で、蒼牙2000・改が静かに告げる。


「皆さま、本日はお疲れさまでした。

 なお、私はまだ“序の口”です」


「え?」


 全員が一斉にすみれコーチを見る。


 すみれコーチはニヤリと笑った。


「当然でしょ。

 まだ改良途中なんだから。

 次はもっとすごくするよ」


「ちょっと待って!?」


「これ以上!?」


 ツッコミの嵐の中、

 唯奈は蒼牙2000・改のハンドルに手を置いた。


「なぁ蒼牙。

 これからも一緒にやるっぺよ」


「もちろんです、唯奈さん。

 畑も、戦場も――お任せください」


 こうして、

 戦隊ヒロイン史上、最も農業的で、最も頼れる新戦力が誕生したのだった。


 ――次に耕されるのは、どの戦場か。

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