畑から再起動!蒼牙2000・改が魔法少女唯奈の元へ帰還
群馬県太田市。
すみれコーチの実家にして、知る人ぞ知る**「だいたい何でも直る町工場」**では、今日も金属音とため息が交互に響いていた。
「……だから言ったのよ。麗奈に貸すとロクなことにならないって」
溶接マスクを外しながら、すみれコーチがぼやく。
その視線の先には、かつて常陸太田市の畑を駆け抜けたドリームトラクター――
蒼牙2000の、見るも無残な残骸があった。
「でもコーチ、フレームは原型保ってます。
ここ直せば、いけます。たぶん……」
控えめに言う稲生明日香の横で、すみれコーチはニヤリと笑う。
「直す?
どうせなら化け物にするわ」
こうして始まった修理は、いつの間にか
・耐衝撃フレーム再設計
・SUV系高トルクエンジン換装
・全天候対応サスペンション
・戦闘・農作業・日常走行の三モード切替
・そして謎のAIユニット増設
という、修理という名の魔改造へと進化していた。
一方その頃、常陸太田市。
唯奈は今日も畑にいた。
鍬を入れる前に、なぜか土の中の水脈が「分かる」。
空を見ると、数分後に吹く風の向きが「読める」。
「……なんか最近、
オラ、畑と会話してねぇか?」
試作品透視装置の後遺症か、はたまた魔法か。
とにかく唯奈のスピリチュアル能力は、
戦闘任務でも通用するレベルまで静かに成長していた。
そこへ――
聞き慣れた、しかしどこか重厚なエンジン音。
「……まさか」
畑道の向こうから現れたのは、
以前より一回りゴツく、無駄にカッコよくなったトラクター。
「よっ」
と軽く手を挙げるすみれコーチ。
助手席には明日香。
そして――
「唯奈さん。
お久しぶりです」
その声を聞いた瞬間、唯奈は固まった。
「……しゃ、しゃべって……」
「私は《蒼牙2000・改》です。
不死身です。
唯奈さんを置いて遠くに行くわけ、ないじゃないですか」
次の瞬間、唯奈の目から涙がポロポロ落ちる。
「……バカ。
心配させやがって……」
蒼牙2000・改は、どこか誇らしげに続けた。
「やっぱり常陸太田の空気は良いですね〜。
私はこの街が大好きです」
近所の農家のおじさんが遠くで一言。
「……トラクターが郷土愛語る時代かぁ???」
すみれコーチは腕を組み、説明を始める。
「いい?
蒼牙2000・改は――
公道走行可・農作業最適・戦闘対応」
・最大トルク強化
・魔法反応サポートAI搭載
・唯奈の能力を安定化する補助制御
・なお、しゃべりすぎるのは仕様
「つまり実戦投入よ」
唯奈の目がキラッと光る。
「……オラ、やるっぺ」
その瞬間、蒼牙2000・改が静かに言う。
「魔法少女唯奈。
これからも、よろしくお願いします」
しばらくして、唯奈がふと疑問を口にした。
「……ところでさ。
コーチと明日香さん、
蒼牙2000・改でここまで来たんだよな?」
「ええ」
「……帰りは?」
沈黙。
すみれコーチと明日香、顔を見合わせる。
「あっ……」
蒼牙2000・改が丁寧にまとめる。
「つまり、
本日はこのまま常陸太田に宿泊、ということですね」
唯奈は笑った。
「……相変わらず、
計画性ねぇ人たちだっぺ」
こうして始まるかもしれない――
ドリームトラクター蒼牙2000・改と、
魔法少女にして農民・山口唯奈の冒険活劇。
畑から始まるヒーロー物語は、
今日もだいたい行き当たりばったりで続いていく。
(つづく、たぶん)




